VRChatのアセット制作(衣装など)を始めるにあたって、まずBoothにどんな商品があるか、市場の全体像を把握したいと思いました。Boothには膨大なVRChat関連商品が出品されていますが、「テイスト」「カラー」「体型」のような切り口で横断的に商品を俯瞰する手段がなく、情報収集に時間がかかっていました。
そこで、Booth商品に独自のタグを付与して整理・検索できるWebサービス「VRCFinder」を開発しました。この記事では、開発の経緯と仕組みについて紹介します。

開発のきっかけ
VRChatは年々ユーザー数を伸ばしていて、メタバースプラットフォームとしての存在感が増しています。筆者もVRChat上で開催される技術・学術系の集会に積極的に参加していて、最新のAI技術や開発環境についての情報収集に活用しています。
VRChatの文化の中でも特に盛んなのが「改変」と呼ばれるアバターのカスタマイズです。ベースとなるアバターに衣装やアクセサリーを着せ替えたり、テクスチャを書き換えたりして、自分だけの見た目を作り上げる。この改変文化を支えているのが、クリエイターズマーケットBoothです。多くのクリエイターがVRChat向けのアバターや衣装、小物をBoothで販売していて、膨大な商品が集まっています。
ただ、BoothはVRChat専用のマーケットではありません。同人誌、音楽、ハンドメイド雑貨など、あらゆるジャンルの商品が出品されている総合マーケットプレイスです。VRChat関連はたくさんあるカテゴリの中の1つに過ぎません。
そのため、VRChatの衣装を探そうとしても、タグやカテゴリの検索結果にVRC以外の商品が混ざってきたり、VRChat特有の切り口(対応アバター、テイスト、体型など)で絞り込む手段がなかったりと、目的の商品にたどり着くまでに時間がかかる実情がありました。
Boothには日々たくさんのクリエイターが商品を出品していて、エコシステムとしてとても活発です。この商品データを、服装の種類やカラー、テイストといった切り口で整理して検索できたら便利だろうな、とはずっと思っていました。
そんな中、2025年10月にBoothがスクレイピングに関するガイドラインを更新しました。その中で、Boothのデータを活用した歓迎するアプリケーション例として「公開情報を収集し独自の検索やレコメンデーションに活用するアプリケーション」が挙げられていたんです。これを見て、自分が作りたかったものはまさにこれだと確信し、VRCFinderの開発に踏み切りました。(ガイドライン準拠の詳細は後述します)
VRCFinderの概要
VRCFinderは、Boothに出品されているVRChat関連商品に独自のタグとキーワードを付与し、多角的に検索・閲覧できる無料のWebサービスです。アカウント登録は不 要で、PCでもスマートフォンでも利用できます。
注意点として、VRCFinderはリアルタイムの検索サイトではありません。収集対象は2022年以降に発売された商品のうち、好き数(いいね数)500以上の商品で、定期的にデータを収集・分析して掲載しています。商品1つ1つにタグを付与する分析処理に時間がかかるため、対象年数も絞っています。
新着商品をいち早くチェックしたいなら、Boothを直接見るのが一番早いです。VRCFinderが得意なのは、たとえば「夏だから水着衣装を探したい」「ゴシック系の改変をしたいけど、どんな衣装があるだろう」といったシーンで、テイストや衣装タイプなどの切り口から関連商品をまとめて見つけること。シーズンや改変テーマが決まったときの商品探しを、より効率的にするためのサービスです。
データ収集と独自タグの仕組み
収集基準の背景
「2022年以降・好き数500以上」という基準は、現実的な運用ラインとして設定しています。基準を厳しくしすぎると 掲載数が少なくなりますし、逆に緩くしすぎると対象商品が増えすぎて分析に時間がかかり、データの更新頻度が落ちてしまいます。掲載範囲と更新スピードのバランスを取った結果、この水準に落ち着きました。
タグ生成の流れ
独自タグの生成は、複数の情報源を組み合わせて行っています。
- テキスト分析: 商品のタイトル・登録タグ・概要欄(説明文)から、対応アバターや衣装種別、特徴的なキーワードを抽出
- 画像分析: サムネイル画像からカラーやテイスト(かわいい系、クール系など)を判定
- 手動キュレーション: 自動分析の結果を精査し、誤分類の修正や不足タグの補完を実施
テキスト分析から画像分析へ
開発当初はテキスト分析のみでタグを生成していました。タイトルや概要欄から衣装種別や対応アバター名を抽出する仕組みです。これだけでもある程度は機能しましたが、テキストから得られる情報には限界がありました。
Boothの商品ページには、出品者が設定したタイトル・タグ・説明文が掲載されています。しかし、衣装のテイスト(かわいい系、クール系など)やメインカラー、装飾の特徴、体型の印象といった見た目から読み取れる情報は、商品ページに明記されていないことがほとんどです。出品者がわざわざ「この衣装はピンク系でかわいいテイストです」とは書かないですよね。
そこでサムネイル画像の分析を導入しました。画像を解析することで、衣装タイプ・テイスト・外見の特徴・カラー・装飾・体型といった、Boothの商品ページにも登録されていない客観的 な情報をタグとして付与しています。これにより、「ゴシック系の衣装」「寒色系のロングコート」のような、抽象的なイメージからでも商品を探せるようになりました。
主な機能
独自タグ・キーワード検索
Boothには存在しない独自のタグとキーワードで横断的に検索できます。「かわいい」「クール」「ゴシック」「和風」といったテイスト系のタグや、「ミニスカート」「ロングコート」「メイド服」といったアイテム種別のタグなど、直感的な言葉で商品を探せます。
対応モデル一覧
VRChatで人気のアバターモデルごとに、対応商品を一覧表示できます。自分が使っているアバターを選ぶだけで、そのアバター向けの衣装やアクセサリーを効率的に探せます。

カテゴリ・タグ一覧
ジャンルごとに整理されたカテゴリとタグの一覧ページを用意しています。「どんなタグがあるか分からない」という方でも、一覧から興味のあるタグをタップするだけで関連商品を閲覧できます。

テイスト・体型・カラーフィルタ
見た目の雰囲気(テイスト)、アバターの体型、メインカラーなどの条件で絞り込みが可能です。衣装だけでなくワールドの検索にも対応し ています。改変のテーマが決まっているときに特に便利で、例えば「青基調で統一したい」ならカラーで青を選択するだけで、青色の衣装やワールドをまとめて見つけることができます。複数の条件を組み合わせれば、イメージにより近いアイテムに絞り込めます。

技術的な工夫
ここでは、開発の中で実際にぶつかった課題と、その対応について紹介します。
ニュートラルな商品名の取得
Boothではクリエイターが独自に期間限定セールを行うことがあり、セール中は商品名の頭に「【50%OFF】」「【セール中】」といった文言を付けるのがBoothの文化です。
これ自体は購入者にとってありがたい情報なのですが、VRCFinderの商品一覧にそのまま表示すると、セール文言の分だけ本来の商品名が押し出されてしまい、レイアウトが崩れることが多発しました。しかもセールが終わると元の商品名に戻るので、表示が安定しません。
そこで、セール関連の文言を検出してリスト表示上では非表示にする処理を入れています。
タグの表記ゆれ統合
クリエイターさんの中には、タグに細かく商品の特性を登録してくれている方がいます 。ただし、同じ意味でも表記が異なるケースが少なくありません。
- 「天使の輪」と「ヘイロー」
- 「手袋」と「グローブ」
- 「角」と「ホーン」
- 「Modular Avatar」と「ModularAvatar」
- 「魔法の杖」と「魔法杖」
これらをそのまま別のタグとして扱うと、検索結果が細分化されすぎてしまいます。「ヘイロー」で検索した人が「天使の輪」タグの商品を見逃すのはもったいない。VRCFinderでは、同義のタグを統合する辞書を用意して対応しました。
対応モデルの表記ゆれ対応
表記ゆれの問題は、対応アバターモデルの記載でも発生していました。例えば人気モデルの「Lapwing」は、クリエイターさんによって「ラプウィング」「ラップウイング」「ラップウィング」など、カタカナ表記にかなりのバラつきがあります。
Boothで地味に検索がしづらい原因の1つがこれです。正式名称で検索しても、別の表記で登録されている商品がヒットしません。VRCFinderでは対応モデルごとに表記ゆれの辞書を作成し、どの表記で登録されていても正しくキャッチアップできるようにしています。
制作者の情報収集にも
VRCFinderは、もともと筆者自身がアセット制作のリサーチ目的で開発を始めたツールです。
独自タグで市場の商品を横断的に閲覧できるため、制作者にとっても便利なリサーチツールとして機能します。
- トレンドの把握: どんなテイストの衣装が人気なのか
- 競合調査: 特定のカテゴリにどれくらいの商品があるか
- ニッチの発見: まだ商品数が少ないカテゴリを見つける
- 対応アバターの選定: どのアバター向けの需要が大きいか
好き数500以上の人気商品に絞って掲載しているため、ユーザーに支持されているデザインの傾向やトレンドを把握するのにも役立ちます。結果として、制作者だけでなく購入者にとっても便利な検索ツールになりました。
ガイドライン準拠について
VRCFinderのデータ収集は、Boothのガイドラインおよびスクレイピングに関するガイドラインの見直し(2025/10/10)に基づき、公開情報の範囲内で行っています。
Booth側が歓迎するアプリケーション例として「公開情報を収集し独自の検索やレコメンデーションに活用するアプリケーション」が挙げられており、VRCFinderはこの方針に沿って運用しています。
参考: Booth ガイドライン / スクレイピングに関するガイドラインの見直しについて (2025/10/10)
まとめ
VRChatのアセット制作者として、Boothの商品情報をもっと効率的にリサーチしたいという動機から始めた開発が、VRCFinderという形になりました。
Boothには素晴らしい商品がたくさんあります。VRCFinderはそのエコシステムの上に、検索の切り口を追加するツールです。テイスト・カラー・体型・対応モデルなど、多角的な条件で商品を探せることで、理想のアイテムとの出会いをサポートします。
今後も掲載商品の拡充やタグ精度の向上に取り組んでいきます。なお、VRCFinderは定期的に収集したデータを掲載しているため、価格や在庫などの最新情報は必ずBoothの商品ページでご確認ください。