概要
Blenderは、3Dモデリングとアニメーションのための強力なツールとして知られていますが、実は2D描画・アニメーション機能も搭載しています。それが「グリースペンシル」です。
グリースペンシルは、デジタル漫画制作、2Dアニメーション制作、3Dシーンへのアノテーション(注釈)追加、さらには3Dモデルと2D描画を組み合わせた独創的な表現まで、多岐にわたる用途に対応できる、非常に柔軟で強力な機能です。
この記事では、グリースペンシルの基本的な使い方から、簡単なアニメーション制作、そして3Dと の融合表現まで、初心者から中級者の方がグリースペンシルの世界に足を踏み入れるための基礎知識を解説します。
グリースペンシルオブジェクトの作成
グリースペンシルを使い始めるには、まずグリースペンシルオブジェクトを作成する必要があります。
Shift+Aキーでオブジェクト追加メニューを表示します。- 「グリースペンシル」を選択し、用途に応じたプリセット(「2D アニメーション」「3D スケッチ」など)を選択します。
「2D アニメーション」を選択すると、正面図(フロントビュー)で描画するのに最適化された環境が自動的に設定されます。
描画ツールの基本
グリースペンシルオブジェクトを選択した状態で、左側のツールバーから描画ツールを選択します。
| ツール | 用途 |
|---|---|
| ペンシル (Pencil) | 基本的な描画ツール。手描きのような自然な線を描きます。 |
| ブラシ (Brush) | より太く、柔らかい線を描きます。 |
| 消しゴム (Eraser) | 描いた線を消します。 |
| 直線 (Line) | 直線を描きます。Shiftキーを押しながら使うと、より正確に描けます。 |
| ポリゴン (Polygon) | 多角形を描きます。 |
| 円 (Circle) | 円を描きます。 |
ブラシの設定
- サイズ:
Fキーを押しながらマウスをドラッグして調整します。 - 強さ:
Shift+Fキーを押しながらマウスをドラッグして調整します。 - 色: 左側のツールバーにある色見本をクリックして、描画色を選択します。
レイヤーの管理
グリースペンシルでは、複数のレイヤーを使用して、異なる要素を分離して管理できます。例えば、「背景」「キャラクター」「エフェクト」といったように、レイヤーを分けることで、後から個別に編集・アニメーションを追加できます。
レイヤーの追加:
- プロパティエディタの「グリースペンシルプロパティ」タブを開きます。
- 「レイヤー」セクションで、「+」ボタンをクリックして新しいレイヤーを追加します。
- 各レイヤーに分かりやすい名前を付けます。
簡単なアニメーション制作
グリースペンシルでアニメーションを作成する基本的なワークフローは、従来の手描きアニメーションと同じです。
- フレーム1: キャラクターの最初のポーズを描きます。
- フレーム5: キャラクターの次のポーズを描きます(キーフレームを設定)。
- フレーム10: さらに次のポーズを描きます。
- 再生: タイムラインで再生すると、各フレーム間が自動的に補間され、アニメーションが完成します。
キーフレームの設定: 描画後、Iキーを押してキーフレームを設定するか、プロパティエディタから「グリースペンシルキーフレーム」を追加します。
3Dスペースへの描画
グリースペンシルの強力な特徴の一つが、3Dスペースに直接描画できることです。これにより、3Dモデルの上に2D的な描画を重ねることで、ユニークな視覚効果を作り出せます。
3Dスケッチモード:
- グリースペンシルオブジェクトを選択し、描画ツールを選択します。
- 3Dビューポートで、マウスカーソルを3D空間内に移動させながら描画します。
- 描画は、カメラから見た位置に、3D空間内に配置されます。
このアプローチにより、3Dモデルの周囲に説明的な矢印やテキスト、装飾的な要素を追加することができます。
2D/3D混合表現
グリースペンシルの最も創造的な使い方の一つが、3Dレンダリングと2D描画を組み合わせることです。例えば、3Dで作成した背景に、手描きのキャラクターを重ねたり、3Dモデルの一部を手描きで修正・強調したりすることができます。
コンポジターとの組み合わせ:
- グリースペンシルを含むシーンをレンダリングします。
- コンポジターで、レンダリング結果とグリースペンシルレイヤーを合成します。
- 色調補正やエフェクトを追加して、最終的な見た目を調整します。
まとめ
グリースペ ンシルは、Blenderの3D機能と2D描画機能を融合させた、非常にユニークで強力なツールです。
- 基本的な描画: ペンシル、ブラシ、消しゴムなどのツールで、直感的に描画できる。
- レイヤー管理: 複数のレイヤーを使用して、要素を分離・管理できる。
- アニメーション: 従来の手描きアニメーションと同じワークフローで、2Dアニメーションを制作できる。
- 3D描画: 3Dスペースに直接描画することで、ユニークな表現が可能。
- 2D/3D融合: 3Dレンダリングと2D描画を組み合わせて、新しい表現を生み出す。
グリースペンシルは、従来の3DCGの枠を超えた、新しい表現の可能性を開きます。アニメーション、イラスト、デザイン、VFXなど、様々な分野での活用が期待できます。ぜひ、この強力なツールを使いこなして、あなたの創造性を存分に発揮してください。