概要
Unreal Engine (UE) の強力な機能であるBlueprintは、プログラミングの知識がなくてもゲームロジックを視覚的に構築できるため、初心者からプロまで幅広く利用されています。しかし、プロジェクトが大規模になるにつれて、「Blueprintが原因でゲームが重くなった」というパフォーマンスの壁にぶつかることがあります。
本記事では、Blueprintのパフォーマンスを劇的に改善する 「Nativize(ネイティブ化)」 の仕組みと、それがUE5でどのように変化したかを解説します。さらに、Nativizeに頼らずともBlueprintの処理速度を向上させるための実践的なベストプラクティス を、具体的なコード例を交えて紹介します。
Blueprintのパフォーマンス課題
BlueprintがC++より遅い理由
Blueprintは、Bytecode(バイトコード)にコンパイルされ、Blueprint VM(仮想マシン)上で実行 されます。純粋なインタープリタ言語とは異なりますが、ノードが実行されるたびにVMがバイトコードを解釈し、対応するC++の関数を呼び出すというオーバーヘッド が発生します。
💡 Blueprintは「思ったほど遅くない」場合も
Epic Gamesの公式ドキュメント「ベストプラクティスの通説を打ち破る」では、多くの一般的なゲームロジックにおいてBlueprintとC++のパフォーマンス差は体感できるレベルではない と説明されています。パフォーマンス問題が発生 した場合は、闇雲にC++化するのではなく、プロファイリングで実際のボトルネックを特定 してから対処することが重要です。
特に、複雑な計算や、毎フレーム実行される処理(Tickイベントなど)をBlueprintで大量に行うと、このオーバーヘッドが積み重なり、ゲーム全体のフレームレート低下につながります。
Nativize(ネイティブ化)とは
Nativize とは、Unreal Engine 4 (UE4) のパッケージング設定にあった機能で、プロジェクト内のBlueprintアセットを自動的にC++コードに変換 する仕組みです。
これにより、Blueprintの実行時に発生していた解釈のオーバーヘッドがなくなり、ネイティブなC++コードとして実行されるため、特に計算負荷の高いBlueprintのパフォーマンスが大幅に向上しました。
| 特徴 | Blueprint (通常) | NativizeされたBlueprint (UE4) | C++ |
|---|---|---|---|
| 実行環境 | Blueprint VM (バイトコード実行) | ネイティブC++コード | ネイティブC++コード |
| パフォーマンス | 低い (オーバーヘッドあり) | 高い (C++に近い) | 最も高い |
| デバッグ | 容易 | 困難になる場合がある | 容易 (IDEを使用) |
| 利用バージョン | 全バージョン | UE4 (UE5では廃止) | 全バージョン |