プロジェクトを作ったら、すぐに中身を作り始めたくなります。ただ、その前に済ませておきたい設定がいくつかあります。
初期設定を疎かにすると、後々「なぜか動作が重い」「ファイルを消したら戻せない」「チームでファイルが競合する」といった、 ゲーム作りと関係のないトラブル に時間とやる気を奪われます。逆に、最初の30分で5つの設定を済ませておけば、開発環境は安定し、安心して壊せる(=実験できる)環境が手に入ります。この記事では、その5つを理由と手順つきで解説し、最後に「最初のコミットでタイムマシンを動かす」実践まで行います。
この記事でわかること
- ソース管理(Git) の設定と、UE5専用
.gitignoreの考え方- Editor Startup Map / Game Default Map の使い分け
- Enhanced Input System の確認ポイント(UE5.1以降は最初から有効)
- エディタの 言語設定 と 軽量化 の定番設定
- 実践:最初のコミットを作り、 わざと壊して戻す
ソース管理(Version Control)の設定
ソース管理(GitやPerforce)は、プロジェクトの 「保険」 であり 「タイムマシン」 です。バグを混入させた時、大事なファイルを誤って消した時、ソース管理がなければその日の作業が水の泡になります。最悪の場合、プロジェクト全体を失います。一人開発でも必須です。

- Gitの導入: Git公式サイトからインストールし、プロジェクトフォルダでリポジトリを作成します(実践節で実際にやります)
- UEエディタとの連携(任意): メニューの ツール → ソース管理 → ソース管理に接続 で、エディタ内から変更の確認やコミットができるようになります
.gitignore——「生成されるもの」はコミットしない
UEプロジェクトのフォルダには、エンジンがいつでも再生成できる一時ファイル(Binaries・Intermediate・DerivedDataCache・Saved)が大量に含まれます。これらをリポジトリに入れるとサイズが際限なく膨らみ、チーム開発では競合の温床になります。 コミットするのは Content・Config・.uproject など「自分で作ったもの」だけ 。この仕分けを自動でやってくれるのが .gitignore です。

# ビルド生成物(エンジンが再生成できる)
Binaries/
Intermediate/
# キャッシュ
DerivedDataCache/
# 一時ファイル・ログ・自動保存
Saved/
# Visual Studioの生成物
*.sln
.vs/
# プラグインの生成物(プラグインを1つ入れた時 点で作られる)
Plugins/**/Binaries/
Plugins/**/Intermediate/
# macOS
.DS_Store
モデルやテクスチャなど 大きなバイナリアセットが増えてきたら、Git LFS の導入も検討してください(→ UEプロジェクトのGit運用)。なお「Zipで丸ごとバックアップ」は、履歴が追えず「どの時点が正しいのか」が分からなくなるため、ソース管理の代わりにはなりません。
デフォルトマップとゲームモードの設定
「起動時にどのレベルが開き、どのルールで動くか」を最初に決めておくと、開発効率とテストの正確性が上がります。 プロジェクト設定 → マップ&モード で設定します。

- Editor Startup Map: エディタ起動時に開くレベル。重い本番レベルを設定するとエディタの起動が遅くなるため、 開発用の軽量なテストレベル を指定するのが定石です
- Game Default Map: パッケージ化したゲームの起動時に最初 にロードされるレベル。 タイトル画面やメインメニュー を指定するのが一般的です
- Default GameMode Class: プロジェクト全体でデフォルトとして使うGameMode(例:
BP_MyGameMode)を指定します。GameModeは「使用するキャラクター・スポーン地点・ゲームルール」を束ねるクラスです(→ UE5の基本概念、詳しくは Game Frameworkの理解)
「Playを押したら知らないマップが開いた」「パッケージしたらテストレベルから始まった」——このあたりの混乱は、たいていこの設定の見落としが原因です。
入力設定(Enhanced Input System)
Enhanced Input System は、UE5.1以降で標準となった入力の仕組みです。旧入力システム(Input Mappings)はすでに非推奨のため、これから作るプロジェクトは必ずEnhanced Inputで組みます。

仕組みの核心は 「動作の意図」と「キー割り当て」の分離 です。
- Input Action (IA): 「ジャンプ」「移動」といった 動作の意図 を定義する
- Input Mapping Context (IMC): その意図に どのキー・ボタンを割り当てるか を定義する
この分離のおかげで、「スペースキーをゲームパッドのAボタンに差し替える」「後からキーコンフィグ機能を足す」といった変更が、ゲームロジックに一切手を触れず行えます。
確認ポイント: UE5.1以降の新規プロジェクトでは、 プロジェクト設定 → エンジン → 入力 の Default Classes が最初から EnhancedPlayerInput / EnhancedInputComponent になっています。基本は 確認するだけでOK 。UE5.0以前から移行したプロジェクトや、値が旧クラスのままの場合だけ、この2つを変更してください。実際の使い方(IA・IMCの作成からBlueprintでの受け取りまで)は Enhanced Input System入門 で手を動かして学べます。
エディタの言語設定
編集 → エディタの環境設定 → 一般 → 地域と言語 で表示言語を選べます。
おすすめは、少し背伸びして English にしておくことです。理由は割り切ったもので、エラーメ ッセージ・公式ドキュメント・海外チュートリアル・トラブル検索の情報量が、英語UIの用語を基準に流通しているからです。「日本語UIの項目名を英語に置き換えてから検索する」という余計な一手間が消えます。もちろん、まず日本語で全体像を掴み、慣れてきたら英語へ切り替える、でも構いません。
エディタのパフォーマンス設定
UE5は高機能なぶん、初期状態ではエディタがPCに大きな負荷をかけます。特にノートPCやミドルスペックのPCでは、次の2つを設定するだけで体感が大きく変わります。
- リアルタイム描画のオフ: ビューポート左上のメニューから 「リアルタイム」(
Ctrl + R) をオフにすると、ビューポートを操作していない間の描画更新が止まり、CPU/GPU負荷とファンの回転が大幅に減ります - フレームレート制限: エディタの環境設定 → 一般 → パフォーマンス の 「エディタのフレームレートを制限(Use Less CPU when in Background含む)」 で上限を60などに設定し、不要なリソース消費を防ぎます

勘違いに注意: ビューポート右上の スケーラビリティ設定(描画品質)を下げても、 最終的なパッケージ品質には影響しません 。エディタ上の表示品質だけの話なので、開発中はPCスペックに合わせて遠慮なく下げてOKです。
実践:最初のコミットで「タイムマシン」を動かす
設定の話だけで終わらせず、いちばん大事な「保険」が本当に効くのかを確かめておきましょう。ここでは最初のコミットを作り、 わざとファイルを壊して、無事に戻す ところまでやります。この体験を一度しておくと、以後の開発で「思い切った実験」が怖くなくなります。

プロジェクトフォルダ(.uproject があるフォルダ)でターミナルを開き、次を 実行します。
git init
# 上で紹介した UE5用 .gitignore をプロジェクト直下に置いてから:
git add .
git commit -m "Initial commit"
これで旗(セーブポイント)が1本立ちました。次に、タイムマシンを試運転します。
- エディタでレベルに適当なCubeを1つ置き、保存します
git statusを実行し、 変更として出てくるのがContent/以下だけ (Saved/などが出てこない)ことを確認します。これが.gitignoreが効いている証拠ですgit add .→git commit -m "Add test cube"で2本目の旗を立てます- ここからが本番。エディタでそのCubeを 削除して保存 し、一度エディタを閉じます
git checkout -- .を実行してからプロジェクトを開き直すと、消したはずのCubeが元どおりに戻っています
「消しても、戻せる」を自分の手で確認できたら、この実践は完了です。もし手順2で Saved/ や Intermediate/ が大量に出てきたら、.gitignore がプロジェクト直下に置けていないか、ファイル名が間違っています(gitignore.txt になっている事故が定番です)。
ポイントは2つです。
- コミットは「作業の区切り」ごとに: 「ギミックが1つ動いた」「アセットを整理した」——動く状態になるたびに旗を立てる癖をつけると、いつでも「最後に動いていた時点」へ戻れます
- 仕組みの詳細は専門記事へ: Git LFSの導入や、バイナリ競合を避けるUE特有の運用(One File Per Actor)は UEプロジェクトのGit運用 で扱っています。まずは「コミット=セーブポイント」の1点だけで十分戦えます
おまけ:先に知っておくと良いこと
| 設定項目 | 目的 | 確認場所 | ベストプラクティス |
|---|---|---|---|
| 1. ソース管理 | 開発履歴の管理と安全性 | プロジェクト直下+[ツール] > [ソース管理] | UE5用 .gitignore で生成物を除外 |
| 2. マップ&ゲームモード | 起動レベルとルールの定義 | [プロジェクト設定] > [マップ&モード] | Editor用は軽いレベル、Game用はタイトル画面 |
| 3. 入力設定 | Enhanced Inputの確認 | [プロジェクト設定] > [エンジン] > [入力] | UE5.1以降は確認のみでOK |
| 4. エディタ言語 | 検索・トラブル解決の効率化 | [エディタの環境設定] > [地域と言語] | 慣れてきたらEnglish推奨 |
| 5. パフォーマンス | PC負荷の軽減 | ビューポートの[リアルタイム]・環境設定 | リアルタイムオフ+フレームレート制限 |
まとめ
- 初期設定は「ゲーム作りと関係ないトラブル」への 前払いの保険 。最初の30分で済ませる
- ソース管理は一人開発でも必須。 コミット=セーブポイント 、
.gitignore=「生成物は入れない」フィルタ - Enhanced InputはUE5.1以降 最初から有効 。仕組み(IAとIMCの分離)だけ頭に入れておく
足場が整ったら、エディタUIの基本で操作を体に入れ、アセット管理入門でフォルダ構造の育て方を押さえましょう。学習の全体像はUE5学習のロードマップへ。
試運転で消したCubeが戻ってきた、あの「いつでも元に戻せる」という安心感が、これからのあなたの実験を支えてくれます。