Mixamoで良さそうな走りモーションを見つけて、UEにインポートした。ところが自作キャラのAnim Blueprintで選ぼうとすると、そのアニメーションが候補に出てこない。無理やり同じスケルトンとしてインポートすると、キャラが折り畳まれたような姿勢になる。
原因はスケルトンの違いで、これを橋渡しする仕組みが リターゲット です。UE5では IK Rig と IK Retargeter という2種類のアセットを使います。この記事では、なぜそのままでは使えないのかという理屈から、Mixamoのアニメーションをマネキンへ移す通しの手順までを解説します。
この記事でわかること
- アニメーションが スケルトンに紐づいている ので流用できない理由
- IK Rig = 1体分の「ここが腕」という地図を作るアセット
- IK Retargeter = 2枚の地図を 対応づけて変換する アセット
- リターゲット後の 腕のめり込み・足滑り の直しどころ
- 実践:Mixamoのア ニメーションをマネキンへ移す通し手順
なぜそのままでは使えないのか
アニメーションアセットの中身は、キャラクターの見た目ではありません。 「どのボーンを、どのフレームで、どれだけ回すか」の記録 です。つまり中身はボーン名の一覧と、その回転・移動の数値です。

ここでMixamoとUEマネキンを並べると、名前がまるで違います。
| 部位 | Mixamo | UE5マネキン |
|---|---|---|
| 腰 | mixamorig:Hips | pelvis |
| 背骨 | mixamorig:Spine / Spine1 / Spine2 | spine_01 〜 spine_05 |
| 左上腕 | mixamorig:LeftArm | upperarm_l |
| 左前腕 | mixamorig:LeftForeArm | lowerarm_l |
| 左太もも | mixamorig:LeftUpLeg | thigh_l |
| 最上位 | mixamorig:Hips(腰が最上位) | root(腰の上にrootがある) |
違うのは名前だけではありません。 背骨の本数 が違い、UEマネキンには移動を担当する root ボーンがあるのにMixamo側にはありません。だからアニメーションを機械的に貼り付けることができません。
UEは、アニメーションアセットが どのSkeletonアセットに属するか を厳格に管理しています。Anim Blueprintの候補に出てこないのは、この所属が違うためです。
リターゲットは、この差を「部位の対応」で吸収する作業です。 ボーン名を1本ずつ手で対応づけるのではなく、「腕」「脚」「背骨」といったまとまり(チェーン)単位で対応づける のがUE5のやり方です。
IK Rig:1体分の地図を作る
IK Rig は、1体のスケルトンに対して「どこからどこまでが腕なのか」を宣言するアセットです。送り側と受け側で それぞれ1つずつ 必要になります。

作成はコンテンツブラウザの右クリック → Animation → IK Rig です。Skeletal Meshを右クリックして Create → IK Rig からでも作れて、この場合はメッシュが最初から設定された状態で開きます。
エディタを開いたら、やることは2つです。
1. Retarget Rootを決める。 ヒエラルキーで腰のボーン(マネキンなら pelvis、Mixamoなら mixamorig:Hips)を右クリックし、Set Retarget Root を選びます。ここがキャラクター全体の移動の基準になります。
2. Retarget Chainを定義する。 連続したボーンを選び、右クリック → Add New Retarget Chain 。チェーンには名前を付けます。
| チェーン名の例 | 含めるボーン(マネキン) |
|---|---|
Spine | spine_01 〜 spine_05 |
Head | neck_01 〜 head |
LeftArm | upperarm_l → hand_l |
RightArm | upperarm_r → hand_r |
LeftLeg | thigh_l → ball_l |
RightLeg | thigh_r → ball_r |
ここで重要なのが チェーン名を送り側と受け側でそろえる ことです。後の工程でIK Retargeterが名前を手がかりに自動マッピングするので、片方が LeftArm でもう片方が Arm_L だと自動では繋がりません。
UE5のマネキンにはIK Rigが同梱されています。
Characters/Mannequins/RigsにIK_Mannequinがあるので、受け側がマネキンなら自分で作る必要はありません。作るのは送り側(Mixamo)の分だけです。
IK Retargeter:2枚の地図を対応づける
IK Retargeter は、2つのIK Rigを並べて対応づけ、実際にアニメーションを変換するアセットです。作成は右クリック → Animation → IK Retargeter で、作成時に ソース側のIK Rig を選びます。

エディタを開いたら、詳細パネルで Target IKRig Asset に受け側のIK Rigを設定します。ビューポートに2体が並んで表示されれば準備完了です。左がソース、右がターゲットになります。
次に Chain Mapping パネルを見ます。ここに、ターゲット側のチェーン一覧と「どのソースチェーンから受け取るか」の対応が並びます。 Auto-Map Chains を押すと、名前の一致で自動的に埋まります 。埋まらなかった行だけ、プルダウンから手で選びます。
対応づけが済んだら、Asset Browser タブでソース側のアニメーションを選びます。ビューポートの右側のキャラクターが動けば、変換は成功しています。
この段階ではまだアセットは作られていません。 IK Retargeterのビューポートはプレビューで、実際のアニメーションアセットを作るには後述の
Export Selected Animationsが必要です。
リターゲットポーズを合わせる
リターゲットの品質を決めるのが リターゲットポーズ です。これは「動いていない状態のキャラが、どういう姿勢で立っているか」の基準で、ここがずれていると変換結果が全部ずれます。

MixamoのキャラクターはT-pose(腕を真横に伸ばす)、UE5のマネキンはA-pose(腕を斜め下に下ろす)で作られています。この状態でリターゲットすると、変換された腕が本来より45度ほど上を向き、肩が上がったような不自然な結果になります。
合わせ方はこうです。IK Retargeterのツールバーで Edit Pose モードに切り替え、ターゲット側(またはソース側)の upperarm_l / upperarm_r を選んで、回転ギズモで角度を合わせます。 2体のシルエットが重なって見えるまで回す のがゴールです。
- 直すのは 基準ポーズだけ で、アニメーションそのものには影響しません
- 変えた結果は
Retarget Poseとしてアセットに保存されます。プルダウンから複数のポーズを作り分けることもできます - UE5.4以降のIK Rig/IK Retargeterには、人型スケルトンを解析してチェーンと基準ポーズを推定する自動セットアップ機能があります。うまく当たれば手作業が減りますが、結果は必ず目で確認してください
腕を合わせたら、Running Retarget モードに戻してアニメーションを再生し、シルエットが自然かを見ます。ここがリターゲット作業の山場です。
実践:Mixamoのアニメーションをマネキンへ移す
アクションゲームの回避モーション、ホラーゲームの徘徊する敵 、ノベルゲームのちょっとした立ち仕草。 「自分でモーションを作らずに、既製のアニメーションを自分のキャラに載せる」 という場面は、ジャンル問わず必ず来ます。ここではMixamoの走りモーションをUE5マネキンへ移す手順を、通しで組み立てます。

再現用の準備: Third Person テンプレートでUE5プロジェクトを新規作成します。Mixamo(Adobeアカウントが必要)から、キャラクターを1体とアニメーションを1本ダウンロードします。
| 種類 | 名前 | 設定値 |
|---|---|---|
| Mixamoからのダウンロード(キャラ) | Ch_Source | Format: FBX Binary、Pose: T-pose |
| Mixamoからのダウンロード(アニメ) | Running | Format: FBX Binary、Without Skin にチェック、FPS: 30 、Keyframe Reduction: none |
| IK Rig(送り側) | IK_Mixamo | 自分で作成 |
| IK Rig(受け側) | IK_Mannequin | 同梱 (Characters/Mannequins/Rigs) |
| IK Retargeter | RTG_Mixamo_To_Manny | 自分で作成 |
| 出力先フォルダ | /Content/Animations/Retargeted | 自分で作成 |
キャラ側は メッシュが必要なので「With Skin」(=Without Skinのチェックを外した状態) 、アニメーション側は骨だけあればよいので Without Skin にする、という使い分けです。
ステップ1:Mixamoキャラをインポートする。 Ch_Source.fbx をコンテンツブラウザにドラッグします。インポート設定で Skeleton は 空のまま (新規スケルトンを作る)、Import Mesh と Import Animations はオンにしておきます。SK_Ch_Source と SK_Ch_Source_Skeleton が生成されます。
ステップ2:アニメーションをインポートする。 Running.fbx をドラッグし、インポート設定で Skeleton に ステップ1で作られた SK_Ch_Source_Skeleton を指定します。Import Mesh はオフ、Import Animations はオンです。ここでスケルトンを間違えると、この後の全工程が噛み合いません。
ステップ3:送り側のIK Rigを作る。 SK_Ch_Source を右クリック → Create → IK Rig 。IK_Mixamo と名付けて開きます。
- ヒエラルキーで
mixamorig:Hipsを右クリック →Set Retarget Root - 下の表のとおりにボーンを選び、右クリック →
Add New Retarget Chainでチェーンを追加
| チェーン名 | 先頭ボーン | 末尾ボーン |
|---|---|---|
Spine | mixamorig:Spine | mixamorig:Spine2 |
Head | mixamorig:Neck | mixamorig:Head |
LeftArm | mixamorig:LeftArm | mixamorig:LeftHand |
RightArm | mixamorig:RightArm | mixamorig:RightHand |
LeftLeg | mixamorig:LeftUpLeg | mixamorig:LeftToeBase |
RightLeg | mixamorig:RightUpLeg | mixamorig:RightToeBase |
チェーン名は IK_Mannequin 側と同じ綴りにします。開いて実際の名前を確認してから付けるのが確実です。
ステップ4:IK Retargeterを作る。 右クリック → Animation → IK Retargeter 。ソースに IK_Mixamo を選び、RTG_Mixamo_To_Manny と名付けます。開いたら詳細パネルの Target IKRig Asset に IK_Mannequin を設定します。2体が並んで表示されます。
ステップ5:チェーンを対応づける。 Chain Mapping パネルで Auto-Map Chains をクリックします。名前をそろえてあれば6本すべて埋まります。空欄が残ったら手動で選びます。
ステップ6:リターゲットポーズを合わせる。 Edit Pose モードに入り、T-poseのソースに合わせてターゲット側の upperarm_l / upperarm_r を 腕が真横になるまで 回します(マネキンはA-poseなので、およそ45度上げる形になります)。2体のシルエットが重なったら Running Retarget モードへ戻します。
ステップ7:書き出す。 Asset Browser タブで Running を選択し、Export Selected Animations をクリック。保存先に /Content/Animations/Retargeted を指定して実行します。
確認方法。 生成されたアニメーションをダブルクリックして開きます。 マネキンが、Mixamoのキャラと同じ腕の振りで走っていれば成功 です。腕が肩より上に持ち上がっていたら、ステップ6のポーズ合わせが足りていません。
生成されたアニメーションは マネキンのSkeletonに属している ので、Anim Blueprintの候補にも普通に出てきます。Blend Spaceへ組み込む手順は Animation Blueprint入門 を参照してください。
ポイントは2つです。
- チェーン名を先にそろえる:
Auto-Map Chainsは名前の一致だけを見ます。受け側のIK_Mannequinを先に開いて綴りを確認してから送り側を作ると、対応づけが1クリックで終わります - リターゲットは一度作れば使い回せる:
RTG_Mixamo_To_Mannyは1つ作れば、同じスケルトンのアニメーションすべてに使えます。Asset Browserで複数選択してExport Selected Animationsを押せば、100本でも一括で変換できます
うまくいかないときの直しどころ

- 腕が体にめり込む/肩が上がったまま → リターゲットポーズのずれです。
Edit Poseモードでupperarm_l/upperarm_rを回し、2体のシルエットを重ねます - 足が地面を滑る → 脚の長さの差が原因です。ソースの歩幅どおりに腰が動くと、脚の短いキャラでは足が追いつきません。
Chain SettingsのIKを有効にし、Speed Plantingを使うと接地中の足を固定できます - 足が地面にめり込む/浮く →
Retarget Root SettingsのScale Verticalを調整します。ターゲットが小柄なら腰の高さを下げる方向です - その場で走って前に進まない → Mixamoのアニメーションは既定でイン・プレース(その場走り)です。Mixamoのダウンロード画面で
In Placeのチェックを外すか、UE側でRoot Motionを使わずCharacter Movementで移動させます - Root Motionが効かない → Mixamoのスケルトンには
rootボーンがありません。腰の移動をrootへ変換する処理が必要になるため、初心者のうちは In Placeで書き出してCharacter Movementに任せる 方が確実です - 指がおかしい/震える → 手指のチェーンは骨数が合わないことが多い部位です。指の対応づけを外し、ターゲット側は静止ポーズのままにするほうが破綻しません
おまけ:先に知っておくと良いこと
リターゲットは書き出した時点で焼き付きます。 生成されたアニメーションアセットは、変換結果を持った独立したアセットです。あとからIK Retargeterのポーズを直しても、書き出し済みのアセットは変わりません。設定を直したら 書き出し直す 必要があります。
Anim Blueprint自体もリターゲットできます。 Anim Blueprintアセットを右クリック → Retarget Anim Blueprints → Duplicate Anim Blueprints and Retarget で、参照しているアニメーションごと差し替えたコピーが作られます。ロジックを組み直さずにキャラを差し替えたいときに使います。
この手順の大きな応用先が、Epic公式のGame Animation Sampleです。 500以上の移動モーションを含む無料サンプルを、ここで覚えたIK Rig/Retargeterの手順で自分のキャラに載せ替えられます。AAAのようななめらかな移動が欲しくなったら、Motion Matching入門 へ進んでください。
アセットの置き場所は最初に決めておきましょう。 リターゲットを始めると、IK Rig・IK Retargeter・変換前アニメ・変換後アニメが一気に増えます。Animations/Source と Animations/Retargeted のように分け ておくと後で困りません(→ アセット管理のベストプラクティス)。
4足歩行のクリーチャーへのリターゲットは別問題です。 チェーン単位の対応づけという考え方は同じですが、人型から4足へは「腕を前脚へ」という無理のある対応になります。この場合は自動マッピングに頼らず、チェーンを手で設計する前提で臨んでください。
まとめ
| アセット | 何をするもの | いくつ作るか |
|---|---|---|
| IK Rig | 1体のスケルトンに チェーン を定義する | 送り側と受け側で 1つずつ |
| IK Retargeter | 2つのIK Rigを 対応づけて変換する | ペアに対して 1つ |
手順は、チェーンを定義する → 対応づける → 基準ポーズを合わせる → 書き出す、の4段です。品質を決めるのは3つめの リターゲットポーズ で、ここさえ合えば残りはほぼ自動で通ります。
作ったアニメーションを実際にキャラクターへ組み込む段階は Animation Blueprint入門 が担当します。この記事が「アニメーションを手に入れる」話、あちらが「手に入れたアニメーションを切り替える」話です。
あなたのキャラクターに、いま何本のモーションが用意できていますか。