【Unreal Engine】アニメーションリターゲット入門:IK RigとIK Retargeterで他人のアニメを自分のキャラへ

作成: 2025-12-12最終更新: 2026-07-20

Mixamoで落としたアニメーションが自分のキャラで動かない理由と、IK Rig/IK Retargeterで移す手順を図解。チェーン定義、Auto-Map、リターゲットポーズの合わせ方、腕のめり込みと足滑りの直し方まで。

Mixamoで良さそうな走りモーションを見つけて、UEにインポートした。ところが自作キャラのAnim Blueprintで選ぼうとすると、そのアニメーションが候補に出てこない。無理やり同じスケルトンとしてインポートすると、キャラが折り畳まれたような姿勢になる。

原因はスケルトンの違いで、これを橋渡しする仕組みが リターゲット です。UE5では IK RigIK Retargeter という2種類のアセットを使います。この記事では、なぜそのままでは使えないのかという理屈から、Mixamoのアニメーションをマネキンへ移す通しの手順までを解説します。

左右に並んだ2体の人形と、その間をつなぐ矢印。アニメーションリターゲットのイメージ

この記事でわかること

  • アニメーションが スケルトンに紐づいている ので流用できない理由
  • IK Rig = 1体分の「ここが腕」という地図を作るアセット
  • IK Retargeter = 2枚の地図を 対応づけて変換する アセット
  • リターゲット後の 腕のめり込み・足滑り の直しどころ
  • 実践:Mixamoのアニメーションをマネキンへ移す通し手順

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なぜそのままでは使えないのか

アニメーションアセットの中身は、キャラクターの見た目ではありません。 「どのボーンを、どのフレームで、どれだけ回すか」の記録 です。つまり中身はボーン名の一覧と、その回転・移動の数値です。

左にMixamoのボーン名リスト、右にUEマネキンのボーン名リストを並べ、名前も本数も違うことを示した図

ここでMixamoとUEマネキンを並べると、名前がまるで違います。

部位MixamoUE5マネキン
mixamorig:Hipspelvis
背骨mixamorig:Spine / Spine1 / Spine2spine_01spine_05
左上腕mixamorig:LeftArmupperarm_l
左前腕mixamorig:LeftForeArmlowerarm_l
左太ももmixamorig:LeftUpLegthigh_l
最上位mixamorig:Hips(腰が最上位)root(腰の上にrootがある)

違うのは名前だけではありません。 背骨の本数 が違い、UEマネキンには移動を担当する root ボーンがあるのにMixamo側にはありません。だからアニメーションを機械的に貼り付けることができません。

UEは、アニメーションアセットが どのSkeletonアセットに属するか を厳格に管理しています。Anim Blueprintの候補に出てこないのは、この所属が違うためです。

リターゲットは、この差を「部位の対応」で吸収する作業です。 ボーン名を1本ずつ手で対応づけるのではなく、「腕」「脚」「背骨」といったまとまり(チェーン)単位で対応づける のがUE5のやり方です。

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IK Rig:1体分の地図を作る

IK Rig は、1体のスケルトンに対して「どこからどこまでが腕なのか」を宣言するアセットです。送り側と受け側で それぞれ1つずつ 必要になります。

スケルトンの丸と線に、Spine・LeftArm・RightArm・LeftLeg・RightLegの色分けした帯を重ねたチェーン定義の図

作成はコンテンツブラウザの右クリック → AnimationIK Rig です。Skeletal Meshを右クリックして CreateIK Rig からでも作れて、この場合はメッシュが最初から設定された状態で開きます。

エディタを開いたら、やることは2つです。

1. Retarget Rootを決める。 ヒエラルキーで腰のボーン(マネキンなら pelvis、Mixamoなら mixamorig:Hips)を右クリックし、Set Retarget Root を選びます。ここがキャラクター全体の移動の基準になります。

2. Retarget Chainを定義する。 連続したボーンを選び、右クリック → Add New Retarget Chain 。チェーンには名前を付けます。

チェーン名の例含めるボーン(マネキン)
Spinespine_01spine_05
Headneck_01head
LeftArmupperarm_lhand_l
RightArmupperarm_rhand_r
LeftLegthigh_lball_l
RightLegthigh_rball_r

ここで重要なのが チェーン名を送り側と受け側でそろえる ことです。後の工程でIK Retargeterが名前を手がかりに自動マッピングするので、片方が LeftArm でもう片方が Arm_L だと自動では繋がりません。

UE5のマネキンにはIK Rigが同梱されています。 Characters/Mannequins/RigsIK_Mannequin があるので、受け側がマネキンなら自分で作る必要はありません。作るのは送り側(Mixamo)の分だけです。

IK Retargeter:2枚の地図を対応づける

IK Retargeter は、2つのIK Rigを並べて対応づけ、実際にアニメーションを変換するアセットです。作成は右クリック → AnimationIK Retargeter で、作成時に ソース側のIK Rig を選びます。

左にソース、右にターゲットの2体が並び、中央のChain Mappingパネルで同名チェーンが線で結ばれている図

エディタを開いたら、詳細パネルで Target IKRig Asset に受け側のIK Rigを設定します。ビューポートに2体が並んで表示されれば準備完了です。左がソース、右がターゲットになります。

次に Chain Mapping パネルを見ます。ここに、ターゲット側のチェーン一覧と「どのソースチェーンから受け取るか」の対応が並びます。 Auto-Map Chains を押すと、名前の一致で自動的に埋まります 。埋まらなかった行だけ、プルダウンから手で選びます。

対応づけが済んだら、Asset Browser タブでソース側のアニメーションを選びます。ビューポートの右側のキャラクターが動けば、変換は成功しています。

この段階ではまだアセットは作られていません。 IK Retargeterのビューポートはプレビューで、実際のアニメーションアセットを作るには後述の Export Selected Animations が必要です。


リターゲットポーズを合わせる

リターゲットの品質を決めるのが リターゲットポーズ です。これは「動いていない状態のキャラが、どういう姿勢で立っているか」の基準で、ここがずれていると変換結果が全部ずれます。

左のT-poseの人形と右のA-poseの人形を並べ、腕の角度差を弧で示した図。右側に腕を下ろして揃えた状態

MixamoのキャラクターはT-pose(腕を真横に伸ばす)、UE5のマネキンはA-pose(腕を斜め下に下ろす)で作られています。この状態でリターゲットすると、変換された腕が本来より45度ほど上を向き、肩が上がったような不自然な結果になります。

合わせ方はこうです。IK Retargeterのツールバーで Edit Pose モードに切り替え、ターゲット側(またはソース側)の upperarm_l / upperarm_r を選んで、回転ギズモで角度を合わせます。 2体のシルエットが重なって見えるまで回す のがゴールです。

  • 直すのは 基準ポーズだけ で、アニメーションそのものには影響しません
  • 変えた結果は Retarget Pose としてアセットに保存されます。プルダウンから複数のポーズを作り分けることもできます
  • UE5.4以降のIK Rig/IK Retargeterには、人型スケルトンを解析してチェーンと基準ポーズを推定する自動セットアップ機能があります。うまく当たれば手作業が減りますが、結果は必ず目で確認してください

腕を合わせたら、Running Retarget モードに戻してアニメーションを再生し、シルエットが自然かを見ます。ここがリターゲット作業の山場です。

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実践:Mixamoのアニメーションをマネキンへ移す

アクションゲームの回避モーション、ホラーゲームの徘徊する敵、ノベルゲームのちょっとした立ち仕草。 「自分でモーションを作らずに、既製のアニメーションを自分のキャラに載せる」 という場面は、ジャンル問わず必ず来ます。ここではMixamoの走りモーションをUE5マネキンへ移す手順を、通しで組み立てます。

左のMixamoキャラが走るモーションを、矢印を通してUEマネキンが同じポーズで走っている実例図

再現用の準備: Third Person テンプレートでUE5プロジェクトを新規作成します。Mixamo(Adobeアカウントが必要)から、キャラクターを1体とアニメーションを1本ダウンロードします。

種類名前設定値
Mixamoからのダウンロード(キャラ)Ch_SourceFormat: FBX Binary、Pose: T-pose
Mixamoからのダウンロード(アニメ)RunningFormat: FBX BinaryWithout Skin にチェック、FPS: 30 、Keyframe Reduction: none
IK Rig(送り側)IK_Mixamo自分で作成
IK Rig(受け側)IK_Mannequin同梱Characters/Mannequins/Rigs
IK RetargeterRTG_Mixamo_To_Manny自分で作成
出力先フォルダ/Content/Animations/Retargeted自分で作成

キャラ側は メッシュが必要なので「With Skin」(=Without Skinのチェックを外した状態) 、アニメーション側は骨だけあればよいので Without Skin にする、という使い分けです。

ステップ1:Mixamoキャラをインポートする。 Ch_Source.fbx をコンテンツブラウザにドラッグします。インポート設定で Skeleton空のまま (新規スケルトンを作る)、Import MeshImport Animations はオンにしておきます。SK_Ch_SourceSK_Ch_Source_Skeleton が生成されます。

ステップ2:アニメーションをインポートする。 Running.fbx をドラッグし、インポート設定で Skeletonステップ1で作られた SK_Ch_Source_Skeleton を指定します。Import Mesh はオフ、Import Animations はオンです。ここでスケルトンを間違えると、この後の全工程が噛み合いません。

ステップ3:送り側のIK Rigを作る。 SK_Ch_Source を右クリック → CreateIK RigIK_Mixamo と名付けて開きます。

  1. ヒエラルキーで mixamorig:Hips を右クリック → Set Retarget Root
  2. 下の表のとおりにボーンを選び、右クリック → Add New Retarget Chain でチェーンを追加
チェーン名先頭ボーン末尾ボーン
Spinemixamorig:Spinemixamorig:Spine2
Headmixamorig:Neckmixamorig:Head
LeftArmmixamorig:LeftArmmixamorig:LeftHand
RightArmmixamorig:RightArmmixamorig:RightHand
LeftLegmixamorig:LeftUpLegmixamorig:LeftToeBase
RightLegmixamorig:RightUpLegmixamorig:RightToeBase

チェーン名は IK_Mannequin 側と同じ綴りにします。開いて実際の名前を確認してから付けるのが確実です。

ステップ4:IK Retargeterを作る。 右クリック → AnimationIK Retargeter 。ソースに IK_Mixamo を選び、RTG_Mixamo_To_Manny と名付けます。開いたら詳細パネルの Target IKRig AssetIK_Mannequin を設定します。2体が並んで表示されます。

ステップ5:チェーンを対応づける。 Chain Mapping パネルで Auto-Map Chains をクリックします。名前をそろえてあれば6本すべて埋まります。空欄が残ったら手動で選びます。

ステップ6:リターゲットポーズを合わせる。 Edit Pose モードに入り、T-poseのソースに合わせてターゲット側の upperarm_l / upperarm_r腕が真横になるまで 回します(マネキンはA-poseなので、およそ45度上げる形になります)。2体のシルエットが重なったら Running Retarget モードへ戻します。

ステップ7:書き出す。 Asset Browser タブで Running を選択し、Export Selected Animations をクリック。保存先に /Content/Animations/Retargeted を指定して実行します。

確認方法。 生成されたアニメーションをダブルクリックして開きます。 マネキンが、Mixamoのキャラと同じ腕の振りで走っていれば成功 です。腕が肩より上に持ち上がっていたら、ステップ6のポーズ合わせが足りていません。

生成されたアニメーションは マネキンのSkeletonに属している ので、Anim Blueprintの候補にも普通に出てきます。Blend Spaceへ組み込む手順は Animation Blueprint入門 を参照してください。

ポイントは2つです。

  • チェーン名を先にそろえる: Auto-Map Chains は名前の一致だけを見ます。受け側の IK_Mannequin を先に開いて綴りを確認してから送り側を作ると、対応づけが1クリックで終わります
  • リターゲットは一度作れば使い回せる: RTG_Mixamo_To_Manny は1つ作れば、同じスケルトンのアニメーションすべてに使えます。Asset Browser で複数選択して Export Selected Animations を押せば、100本でも一括で変換できます
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うまくいかないときの直しどころ

左が腕が体にめり込んだ人形、右が足が地面を滑っている人形。2つの典型的な破綻を並べた図
  • 腕が体にめり込む/肩が上がったまま → リターゲットポーズのずれです。Edit Pose モードで upperarm_l / upperarm_r を回し、2体のシルエットを重ねます
  • 足が地面を滑る → 脚の長さの差が原因です。ソースの歩幅どおりに腰が動くと、脚の短いキャラでは足が追いつきません。Chain SettingsIK を有効にし、Speed Planting を使うと接地中の足を固定できます
  • 足が地面にめり込む/浮くRetarget Root SettingsScale Vertical を調整します。ターゲットが小柄なら腰の高さを下げる方向です
  • その場で走って前に進まない → Mixamoのアニメーションは既定でイン・プレース(その場走り)です。Mixamoのダウンロード画面で In Place のチェックを外すか、UE側でRoot Motionを使わずCharacter Movementで移動させます
  • Root Motionが効かない → Mixamoのスケルトンには root ボーンがありません。腰の移動をrootへ変換する処理が必要になるため、初心者のうちは In Placeで書き出してCharacter Movementに任せる 方が確実です
  • 指がおかしい/震える → 手指のチェーンは骨数が合わないことが多い部位です。指の対応づけを外し、ターゲット側は静止ポーズのままにするほうが破綻しません

おまけ:先に知っておくと良いこと

リターゲットは書き出した時点で焼き付きます。 生成されたアニメーションアセットは、変換結果を持った独立したアセットです。あとからIK Retargeterのポーズを直しても、書き出し済みのアセットは変わりません。設定を直したら 書き出し直す 必要があります。

Anim Blueprint自体もリターゲットできます。 Anim Blueprintアセットを右クリック → Retarget Anim BlueprintsDuplicate Anim Blueprints and Retarget で、参照しているアニメーションごと差し替えたコピーが作られます。ロジックを組み直さずにキャラを差し替えたいときに使います。

この手順の大きな応用先が、Epic公式のGame Animation Sampleです。 500以上の移動モーションを含む無料サンプルを、ここで覚えたIK Rig/Retargeterの手順で自分のキャラに載せ替えられます。AAAのようななめらかな移動が欲しくなったら、Motion Matching入門 へ進んでください。

アセットの置き場所は最初に決めておきましょう。 リターゲットを始めると、IK Rig・IK Retargeter・変換前アニメ・変換後アニメが一気に増えます。Animations/SourceAnimations/Retargeted のように分けておくと後で困りません(→ アセット管理のベストプラクティス)。

4足歩行のクリーチャーへのリターゲットは別問題です。 チェーン単位の対応づけという考え方は同じですが、人型から4足へは「腕を前脚へ」という無理のある対応になります。この場合は自動マッピングに頼らず、チェーンを手で設計する前提で臨んでください。


まとめ

アセット何をするものいくつ作るか
IK Rig1体のスケルトンに チェーン を定義する送り側と受け側で 1つずつ
IK Retargeter2つのIK Rigを 対応づけて変換するペアに対して 1つ

手順は、チェーンを定義する → 対応づける → 基準ポーズを合わせる → 書き出す、の4段です。品質を決めるのは3つめの リターゲットポーズ で、ここさえ合えば残りはほぼ自動で通ります。

作ったアニメーションを実際にキャラクターへ組み込む段階は Animation Blueprint入門 が担当します。この記事が「アニメーションを手に入れる」話、あちらが「手に入れたアニメーションを切り替える」話です。

あなたのキャラクターに、いま何本のモーションが用意できていますか。