【Unreal Engine】Post Process Volume入門:露出と色で画面の印象を決める

作成: 2025-12-12最終更新: 2026-07-20

置いたのに効果が出ない、暗い所へ行くと勝手に明るくなる——Post Process Volumeの躓きどころを整理。Unboundと優先度の仕組みを図解し、洞窟に入ると空気が変わる演出を作る実践つき。

モデルもライティングも作り込んだのに、 なぜか画面が締まらない 。作例で見たような雰囲気にならない。ここで使うのが Post Process Volume です。撮影した写真を現像するように、 できあがった映像の最後の仕上げ を担当します。

ただ、この機能には初心者が確実につまずく箇所が2つあります。 置いたのに効果が出ない ことと、 暗い場所で勝手に明るくなる ことです。この記事では、その2つの対処と色を作る手順、そして 洞窟に入ると空気が変わる 演出の作り方を解説します。

同じシーンが、ポストプロセスの有無で印象が変わるイメージ

この記事でわかること

  • 効果が出ないのは カメラがボリュームの外にいる から(Unbound)
  • 暗所で明るくなるのは 自動露出 の働きで、止め方がある
  • 色を作る順番は 露出 → コントラスト → 色温度 → 彩度
  • エリアごとの切り替えは Priority と Blend Radius
  • 実践:洞窟に入ると 空気が変わる 演出を作る

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ポストプロセスは「現像」

ポストプロセス とは、 すべてが描画された後 に、できあがった画面全体へ処理を掛けることです。

モデル・ライティングという素材の工程と、その後に画面全体へ処理を掛ける現像の工程を分けた図

料理でいえば、モデルとライティングが 素材と調理 、ポストプロセスが 盛り付けと味の調整 にあたります。順番が大事で、 素材が悪いものをポストプロセスで救うことはできません

だからこの記事の内容は、 ライティングをある程度組んだ後 に効いてきます。真っ暗なシーンの色味をいくら調整しても、明るくはなりません。

Lumenとの役割分担: UE5では光の回り込みや反射を Lumen が計算します。 物理的にどう光るかはライティングとLumen、最終的な見え方はポストプロセス です。この線引きを持っておくと、どちらを触るべきか迷いません。

つまずき①:効果が出ない

Place Actors から Post Process Volume をレベルに置き、設定をいじってみる。 それでも何も変わらない 。最初にほぼ全員がここで止まります。

ボリュームの内側にカメラがあるときだけ効果が出る様子と、Unboundをオンにして全体に効かせた様子の対比図

理由はシンプルで、 Post Process Volumeは、カメラがその箱の中に入ったときだけ効く からです。レベルの片隅に小さな箱を置いても、プレイヤーがそこに入らなければ何も起きません。

シーン全体に効かせたいなら、詳細パネルで Infinite Extent (Unbound) をオンにします(検索窓に unbound と入れると早いです)。これで 箱の位置や大きさに関係なく、常に適用される ようになります。

使い分けはこうです。

種類Unbound用途
ベースボリュームオンゲーム全体の基本の色味。1つ置く
ローカルボリュームオフ洞窟・水中・特定の部屋だけの演出

まずは Unboundのベースを1つ置く ところから始めてください。

つまずき②:勝手に明るくなる

次に出会うのがこれです。暗い洞窟に入ったのに、 数秒待つと画面が明るくなって、暗さの演出が台無しになる

暗い場所へ入った直後は暗いが、時間とともに明るく持ち上がってしまう様子の図

これは不具合ではなく 自動露出(Auto Exposure) の働きです。人間の目が暗闇に慣れるのと同じ仕組みで、UEは 画面の明るさを見て、露出を自動調整 しています。

リアルではあるのですが、 演出として暗さを保ちたいときには邪魔になります 。止め方は2つです。

方法1:範囲を狭めて固定する

Exposure カテゴリで、Min EV100Max EV100同じ値 にします。これで自動調整の余地がなくなり、明るさが固定されます。

方法2:Metering Modeを Manual にする

完全に手動で決める方法です。この場合、明るさはカメラの Exposure Compensation などで決まります。

まずは方法1で十分です。 ゲームの明るさを1つに決め打ちしてしまうと、屋外と屋内で調整が効かなくなります。 「範囲を狭める」 ほうが扱いやすく、後から広げることもできます。

自動露出を残す場合でも、 Speed Up / Speed Down(順応の速さ)を調整すると、切り替わりの唐突さを抑えられます。

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色を作る順番

設定項目は膨大ですが、 触る順番を決めておく と迷いません。

露出・コントラスト・色温度・彩度の順に調整していく流れの図
順番項目場所効果
露出Exposureまず全体の明るさを決める
ContrastColor Grading → Globalメリハリ。1.0 → 1.1 程度から
TemperatureColor Grading → Temperature暖色/寒色。雰囲気を最も左右する
SaturationColor Grading → Global彩度。下げると渋く、上げると鮮やかに

明るさを先に決める のが重要です。露出が定まっていない状態で色をいじると、あとで明るさを変えたときに色の印象も変わってしまい、やり直しになります。

雰囲気づくりの目安をいくつか挙げておきます。

出したい雰囲気調整
暖かい・ノスタルジックTemperatureを暖色側へ/Saturationを少し下げる
寒々しい・不穏Temperatureを寒色側へ/Contrastを上げる
色あせた・退廃的Saturationを大きく下げる/Contrastを少し下げる

そして仕上げに Vignette(画面端を暗くする)を ごくわずかに 入れると、視線が中央に集まって画面が締まります。Bloom(光の滲み)も同様で、 強くすると一気に安っぽくなる ので控えめに。

調整は必ずチェックボックスをオンにしてから。 各項目の左にあるチェックが入っていないと、値を変えても反映されません。「動かしているのに変わらない」ときは、ここを疑ってください。


実践:洞窟に入ると空気が変わる

ホラーゲームの地下室、RPGのダンジョン、アドベンチャーの水中——「特定のエリアに入ると画面の雰囲気が変わる」演出は、没入感に直結します。ここでは 屋外から洞窟へ入ると、色と明るさが滑らかに切り替わる 仕組みを作ります。

再現用の準備: 明るい屋外と、暗い洞窟(または閉じた部屋)があるレベルを用意します。なければCubeで囲った空間で構いません。

種類名前設定
Post Process VolumePPV_BaseUnbound オンPriority = 0
Post Process VolumePPV_CaveUnbound オフPriority = 1 /洞窟を覆うサイズ

ステップ1:ベースを作る。 PPV_Base を置き、Infinite Extent (Unbound) をオンにします。ここでゲーム全体の基本の色を決めます。

項目
Exposure → Min EV100 / Max EV100両方 1.0(固定して、暗所で持ち上がらないように)
Color Grading → Global → Contrast1.05
Color Grading → Temperature → Temp6500(ニュートラル寄り)

Playして、屋外が意図した明るさで表示されることを確認します。 暗い場所へ移動しても明るくならなければ 、露出の固定は成功です。

ステップ2:洞窟用のボリュームを置く。 PPV_Cave を洞窟の中に置き、 洞窟の空間を包むようにスケール します。Infinite Extent (Unbound)オフのままPriority1 にします。

Unboundのベースボリュームの上に、洞窟だけを覆うローカルボリュームが重なっている図

Priorityが高いほうが優先されます。 ベースが0、洞窟が1なので、洞窟の中にいる間は洞窟側の設定が勝ちます。

ステップ3:洞窟の色を作る。 PPV_Cave に、屋外とは違う設定を入れます。

項目ねらい
Exposure → Min/Max EV100両方 1.0(ベースと同じ)露出は固定したまま動かさない
Exposure → Exposure Compensation-1.0屋外より暗く
Color Grading → Temperature → Temp4500青みがかった冷たい空気
Color Grading → Global → Saturation0.8彩度を落として陰鬱に
Lens → Vignette → Intensity0.6視野が狭まる圧迫感

暗くしたいときにEV100を下げない。 Min/Max EV100 は「どの明るさのシーンに露出を合わせるか」の値で、 下げるほど画面は明るくなります(暗いシーンに目を慣らす方向)。「暗くしたいから-1.0」は逆効果です。露出は固定したまま、 Exposure Compensation をマイナスにして暗くする のが素直で、符号の向きも直感どおりです。

ステップ4:境界を滑らかにする。 ここが仕上げです。このままだと、洞窟の入口を跨いだ 瞬間に画面がパッと切り替わって 不自然です。

PPV_Cave の詳細パネルで Blend Radius200.0 程度に設定します。これで、ボリュームの境界から200ユニットの範囲で 徐々に混ざる ようになります。

Blend Weight はボリューム全体の効き具合(1.0で全効果)なので、こちらは1.0のままで構いません。

Playして、屋外から洞窟へゆっくり歩いて入ってみてください。 入口に近づくにつれて画面が少しずつ暗く・青くなり、洞窟の中では完全に切り替わっている 。ここまで確認できれば成功です。

うまくいかないときの切り分けです。

  • 洞窟に入っても変わらないPPV_CavePriority がベース以下か、ボリュームがカメラを含んでいません
  • 屋外でも洞窟の色になるPPV_CaveInfinite Extent (Unbound) がオンになっています
  • 境界でパッと切り替わるBlend Radius が0です
  • 暗くしたのに明るく戻る → 露出のMin/Maxが揃っていません
  • 値を変えても何も起きない → 項目左の チェックボックス が入っていません

ポイントは2つです。

  • ベース1つ+ローカル複数、が基本の構成: 全体の色をUnboundで決めておき、特別な場所だけ重ねる。この形にしておくと、「全体を少し暖かくしたい」と思ったときにベースを1つ直すだけで済みます
  • Blend Radiusを入れて初めて演出になる: 切り替わりが瞬間的だと「設定が適用された」ようにしか見えません。 少しずつ変わるから「空気が変わった」と感じられます

画面の色ではなく 光そのもの を変えたいなら、ライトの設定やLumenの側を触ることになります。マテリアル単位で見た目を変えたいなら マテリアル入門 を参照してください。

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おまけ:先に知っておくと良いこと

使わないエフェクトはオンにしない。 ポストプロセスの各項目は、有効にした分だけ描画コストが増えます。とくに Depth of Field(被写界深度)や Motion Blur は重い部類なので、 本当に必要か を考えてから有効にしてください。

カメラ側にも同じ設定があります。 Camera ComponentやCine Camera Actorには Post Process Settings があり、そのカメラで撮っている間だけ適用されます。「このカットだけ色を変えたい」という場合はこちらが便利です。優先順位としては、 カメラ側の設定がボリュームより後に効きます

Show → Post Processing で切り替えて比べる。 ビューポートの Show メニューからポストプロセスをオフにすると、 素の状態 が見られます。「盛りすぎていないか」を確認するのに便利です。作業に没頭すると、だんだん派手になっていきがちです。

Blueprintから動的に変えることもできます。 ダメージを受けたときに一瞬赤くする、といった演出は、Post Process Volumeを変数で持っておき、Set Scalar Parameter Value などで値を変える形で作れます。ただし演出用のマテリアルを Post Process Materials に登録するほうが、複雑な表現には向いています。


まとめ

Post Process Volumeでつまずくのは、ほぼこの3点です。

症状原因対処
効果が出ないカメラがボリュームの外Infinite Extent (Unbound) をオン
値を変えても変わらない項目のチェックが未オン各項目左のチェックボックス
暗所で勝手に明るくなる自動露出Min/Max EV100 を同じ値にする

そして構成の指針が1つ。 Unboundのベースを1つ置き、特別な場所だけローカルで重ねる 。この形にしておけば、全体の調整も個別の演出も、どちらも壊さずに扱えます。

あなたのゲーム、暗い場所は暗いままでいてくれていますか?