UEエディタの概要
Unreal Engine(UE)を初めて起動したとき、目の前に広がる無数のウィンドウ、ボタン、パネルに圧倒された経験はありませんか?UEエディタは、非常に多機能である反面、その複雑さゆえに初心者にとって大きな壁となりがちです。しかし、エディタの主要な構成要素とその役割を一度理解してしまえば、その後の学習効率は飛躍的に向上します。
この記事では、エディタの主要なインターフェースの役割 と、開発をスムーズに進めるための基本操作 を解説します。
エディタの主要パネル
Unreal Engineのエディタは、機能ごとに特化した複数のウィンドウ(パネル)で構成されています。まずは、最も頻繁に使用する4つの主要パネルの役割を理解しましょう。
| パネル名 | 役割 | 初心者が覚えるべき操作 |
|---|---|---|
| ビューポート (Viewport) | 3D空間での作業領域。レベル(シーン)の見た目を編集・確認する場所。 | カメラ移動、オブジェクトの配置・移動・回転・スケール。 |
| ワールドアウトライナ (World Outliner) | 現在のレベルに存在する全てのアクター(オブジェクト)の一覧。 | オブジェクトの選択、階層管理、検索。 |
| 詳細 (Details) パネル | 選択したアクターやアセットのプロパティ(設定値)を表示・編集する場所。 | コンポーネントの追加、位置・回転・スケール値の直接入力。 |
| コンテンツブラウザ (Content Browser) | プロジェクトで使用する全てのアセット(モデル、テクスチャ、ブループリントなど)を管理する場所。 | アセットのインポート、フォルダ整理、検索、アクターへのドラッグ&ドロップ。 |
これらのパネルは、それぞれが独立した機能を持っていますが、連携して動作することで、効率的なレベル構築を可能にしています。
ビューポート操作
ビューポートは、UE開発の中心地です。ここでの操作に慣れることが、UEの習熟度を大きく左右します。
2.1. カメラ操作の基本
カメラ操作は、一人称視点のゲーム操作に似ています。
- 視点移動: マウスの右クリックを押しながら、
W(前進)、S(後退)、A(左移動)、D(右移動)キー。 - 視点回転: マウスの右クリックを押しながら、マウスを動かす。
- 高速移動: 右クリックを押しながら、マウスホイールを上にスクロール するか、
Shiftキーを押す。ビューポート右上のCamera Speed スライダーで速度を細かく調整す ることも可能です。
2.2. オブジェクト操作の基本
レベルに配置したアクターを操作するための重要なショートカットです。
| 操作 | ショートカットキー | 備考 |
|---|---|---|
| 移動 (Translate) | W | 選択したオブジェクトを移動させる。 |
| 回転 (Rotate) | E | 選択したオブジェクトを回転させる。 |
| スケール (Scale) | R | 選択したオブジェクトのサイズを変更する。 |
| 視点フォーカス | F | 選択したオブジェクトにカメラを一瞬で移動させる。迷子になったらこれ! |
💡 ベストプラクティス:効率的なビューポート操作
- グリッドスナップの活用: UE5では、グリッドスナップはデフォルトで有効 になっています。ビューポート上部のグリッドアイコンをクリックしてON/OFFを切り替えられます。
Ctrlキーを押しながら操作すると、一時的にスナップを無効化 して自由に配置できます。スナップ値はグリッドアイコン横のドロップダウンから変更可能です。 - ゲームビューの確認:
Gキーを押すと、エディタのアイコンやギズモ(操作ハンドル)が非表示になり、プレイヤーが実際に目にする画面 (ゲームビュー)を確認できます。 - 選択のロック: ワールドアウトライナでアクターを右クリックし、「Lock Actor Selection」を選択すると、そのアクターが誤って選択されるのを防げます。詳細パネルの「Actor」セクションでも設定可能です。
コンテンツブラウザの活用
コンテンツブラウザは、プロジェクトの「倉庫」です。アセットの管理方法が、プロジェクトの健全性を保つ鍵となります。
3.1. アセットのインポートと整理
- インポート: コンテンツブラウザ左上の「Import 」ボタン、または緑色の「+ Add 」ボタンからファイルを選択するか、エクスプローラーから直接フォルダにドラッグ&ドロップします。
- 整理: 関連するアセットは必ずフォルダで分類しましょう。推奨されるフォルダ構造(例:
Blueprints,Materials,Meshes,Textures)に従うと、チーム開発でも迷いません。
❌ よくある間違い:リファレンスの破壊
コンテンツブラウザ内でアセットを直接移動または削除 すると、そのアセットを参照している他のブループリントやレベルが壊れる(リファレンスが切れる)ことがあります。
- 正しい移動方法: 同一プロジェクト内ではUEエディタ内でドラッグ&ドロップした後、リダイレクタの修正 (右クリック >
Fix Up Redirectors In Folder)を必ず実行してください。Migrateは別プロジェクトへのコピー 用の機能です。 - 注意:
Force Deleteは参照を無視して強制削除するため、他のアセットが壊れる原因になります。使用前に必ず参照関係を確認しましょう。
ブループリントエディタの基本
Unreal Engineの強力な機能の一つが、ノードベースのビジュアルスクリプティングシステムであるブループリント (Blueprint) です。プログラミングの知識がなくても、ゲームロジックを構築できます。
4.1. ブループリントの基本構造
ブループリントエディタは、主に以下の要素で構成されます。
- イベントグラフ (Event Graph): ロジックを構築するメインの作業領域。ノードを配置し、ワイヤーで接続します。
- コンポーネント (Components): アクターが持つ機能(メッシュ、カメラ、ライトなど)の一覧。
- マイブループリント (My Blueprint): 変数、関数、イベントなどのカスタム要素を管理する場所。
4.2. 実践的なブループリントコード例:シンプルなメッセージ表示
ここでは、ゲーム開始時に画面にメッセージを表示する最も基本的なブループリントを紹介します。
// ブループリントコード (Event Graph)
// 1. Event BeginPlayノードを追加
// 2. Print Stringノードを追加
// 3. 実行ピン(白い矢印)を接続
// 4. In Stringに表示したいテキストを入力
// 5. コンパイルして保存
// ノード構成の擬似コード
Event BeginPlay -> Print String (In String: "エディタ操作をマスターしました!")
解説:
Event BeginPlay:ゲームが開始された瞬間に一度だけ実行されるイベントです。Print String:デバッグ用途で、画面左上に指定した文字列を表示するノードです。- この2つのノードを実行ピン (ノードの右側にある白い三角形)で接続することで、「ゲーム開始時に文字列を表示する」というロジックが完成します。
重要なステップ: ロジックを構築したら、必ずエディタ上部のコンパイル (Compile) ボタンと保存 (Save) ボタンを押してください。これを忘れると、変更がゲームに反映されません。
詳細パネルとワールドアウトライナの連携
詳細パネルとワールドアウトライナは、アクターの「設定」と「配置」を司るペアです。
5.1. ワールドアウトライナ:シーンの俯瞰
アウトライナでは、アクターをフォルダにまとめて整理できます。
- 整理のコツ:
Lights,Props,Charactersなどのフォルダを作成し、関連するアクターを格納すると、大規模なシーンでも目的のアクターをすぐに見つけられます。
5.2. 詳細パネル:プロパティの編集
詳細パネルは、選択したアクターの 全ての設定項目を扱います。
- コンポーネントの追加:
Add Componentボタンから、メッシュ、パーティクル、コリジョンなどの機能を追加できます。 - 検索機能の活用: 設定項目が多すぎる場合は、パネル上部の検索バーにプロパティ名(例:
Location,Material)を入力すると、目的の項目に素早くアクセスできます。
エディタ操作のポイント
Unreal Engineのエディタは複雑ですが、その基本は「ビューポートで配置し、アウトライナで選択し、詳細パネルで設定し、コンテンツブラウザでアセットを管理する」というシンプルなサイクルに集約されます。
- ビューポート操作:
W/E/Rでオブジェクト操作、Fでフォーカス、右クリック+WASDでカメラ移動。グリッドスナップはデフォルトON、Ctrlで一時解除。 - アセット管理: コンテンツブラウザでのアセット移動・削除は、リファレンス破壊に注意し、
Fix Up Redirectorsを忘れずに実行する。 - ブループリント: ロジック構築後は必ずコンパイルと保存 を行う。