【Unity】Unityビルド入門:PC、Web、モバイル向けにゲームを書き出す

作成: 2025-12-07

開発したゲームを他の人が遊べるように、実行可能な形式に書き出す「ビルド」。PC (Windows, Mac), WebGL, モバイル (iOS, Android) といった主要なプラットフォーム向けのビルド方法と、それぞれのプラットフォームで注意すべき設定項目を解説します。

概要

Unityエディタでゲームを完成させたら、最後に行うのがビルド (Build) です。ビルドとは、Unityプロジェクトを、特定のプラットフォーム(Windows、macOS、iOS、Androidなど)で直接実行できるスタンドアロンのアプリケーション形式に変換・出力するプロセスです。これにより、UnityエディタがインストールされていないPCでも、誰でもゲームをプレイできるようになります。

この記事では、主要なプラットフォーム向けのビルド手順と、知っておくべき基本的な設定について解説します。

Build Settingsウィンドウ

ビルドに関するすべての設定は、File > Build Settingsから開くBuild Settingsウィンドウで行います。

  • Scenes In Build: ビルドに含めるシーンのリストです。ここに登録されていないシーンはビルドに含まれません。Add Open Scenesボタンで現在開いているシーンを追加できます。リストの先頭(インデックス 0)にあるシーンが、ゲーム起動時に最初にロードされるシーンになります。ドラッグ&ドロップで順番を入れ替えることができます。
  • Platform: ビルド対象のプラットフォームを選択するリストです。PC, Mac & Linux Standalone, WebGL, iOS, Androidなどが並んでいます。プラットフォームを選択し、Switch Platformボタンを押すと、Unityはプロジェクトのアセットをそのプラットフォーム向けに再インポートします。この処理には時間がかかることがあります。

Player Settings

Build Settingsウィンドウの左下にあるPlayer Settingsボタンを押すと、Project Settingsウィンドウが開き、選択中のプラットフォームに関する詳細な設定を行うことができます。これはビルドにおいて非常に重要な設定項目です。

  • Company Name / Product Name: アプリケーションの作者名と製品名。実行ファイルのプロパティや、モバイルでのアプリ名として使われます。
  • Default Icon: アプリケーションのアイコン画像を設定します。
  • Resolution and Presentation: 画面解像度、フルスクリーンモードの可否、対応する画面の向き(縦向き/横向き)などを設定します。
  • Splash Image: ゲーム起動時に表示されるスプラッシュスクリーン(Unityロゴなど)をカスタマイズします(有料プランのみ)。
  • Other Settings: レンダリング設定、色空間(Gamma/Linear)、APIレベル、そして最も重要なバンドルID (Bundle Identifier) の設定など、プラットフォーム固有の技術的な設定項目が集まっています。
    • バンドルID: com.YourCompanyName.YourProductNameのような逆ドメイン形式のユニークなIDです。特にモバイルプラットフォームでは、アプリを識別するための重要なIDとなります。

プラットフォーム別ビルドガイド

PC, Mac & Linux Standalone

最もシンプルで簡単なビルドです。

  1. PlatformPC, Mac & Linux Standaloneを選択します。
  2. Target Platformで対象のOS(Windows, macOS, Linux)を選択します。
  3. ArchitectureでCPUのアーキテクチャ(Intel 64-bitなど)を選択します。
  4. Buildボタンを押し、実行ファイルの保存場所と名前を指定すればビルドが開始されます。
  5. ビルドが完了すると、指定したフォルダに.exeファイル(Windowsの場合)や.appファイル(macOSの場合)が生成されます。

WebGL

ゲームをウェブブラウザ上で動作する形式でビルドします。特別なプラグインなしでプレイできるため、ゲームジャムの作品公開や手軽なデモに適しています。

  1. PlatformWebGLを選択し、Switch Platformします。
  2. Player Settingsで、WebGL特有の設定(メモリサイズなど)を調整します。
  3. Buildボタンを押し、出力先のフォルダを指定します。
  4. ビルドが完了すると、index.htmlファイル、Buildフォルダ、TemplateDataフォルダが生成されます。この一式をウェブサーバーにアップロードし、index.htmlにアクセスすることでゲームがプレイできます。

注意点: セキュリティ上の理由から、多くのブラウザはローカルファイル (file://) としてindex.htmlを開いても正しく動作しません。テストするには、ローカルウェブサーバーを立てる必要があります。

Android

Androidデバイス向けの.apkまたは.aab(Android App Bundle)ファイルを生成します。

  1. SDK/NDK/JDKのセットアップ: Unity HubのInstallsタブで、使用しているUnityバージョンの設定からAndroid Build Supportモジュールを追加し、その中のAndroid SDK & NDK ToolsOpenJDKにチェックを入れてインストールします。
  2. PlatformAndroidを選択し、Switch Platformします。
  3. Player Settings > Other Settingsで、Minimum API LevelTarget API Levelを設定します。
  4. キーストア (Keystore) の作成: Google Play Storeに公開するためには、アプリにデジタル署名が必要です。Player Settings > Publishing Settingsで、Keystore Managerを開き、新しいキーストアを作成します。このキーストアファイルとパスワードは非常に重要なので、厳重に保管してください。
  5. Buildボタンを押して.apkファイルを生成します。このファイルをAndroidデバイスにコピーすれば、インストールしてテストできます。

iOS

iOSデバイス向けのアプリをビルドしますが、最終的なアプリの生成にはmacOSとXcodeが必要です。

  1. macOS環境: WindowsではiOSビルドはできません。macOS上でUnityを実行する必要があります。
  2. PlatformiOSを選択し、Switch Platformします。
  3. Player Settingsで、バンドルIDやターゲットデバイス(iPhone/iPad)などを設定します。
  4. Buildボタンを押すと、Unityは.apkのような直接的なアプリファイルではなく、Xcodeプロジェクトを生成します。
  5. 生成されたXcodeプロジェクトをXcodeで開き、開発者アカウントで署名設定を行い、接続したiOSデバイスにビルド・転送します。App Storeへの申請もXcodeから行います。

まとめ

ビルドは、開発の最終段階であり、自分の作品を世界に送り出すための重要なステップです。

  • Build Settingsウィンドウで、ビルドに含めるシーンとターゲットプラットフォームを設定する。
  • Player Settingsで、アプリ名、アイコン、バンドルIDなど、プラットフォーム固有の詳細を設定する。
  • PCビルドは最も簡単。Buildボタンを押すだけ。
  • AndroidビルドにはSDK/NDK/JDKのセットアップとキーストアによる署名が必要。
  • iOSビルドはmacOS環境が必須で、UnityはXcodeプロジェクトを出力する。最終的なビルドと署名はXcodeで行う。

各プラットフォームには独自の要件や審査プロセスがあります。初めてビルドする際は、公式ドキュメントで最新の要件を確認しながら進めることをお勧めします。