【Unity】Unityのライフサイクル完全解説 - Awake、Start、Updateの実行順序

作成: 2025-12-07

Unityのスクリプトがどのような順序で実行されるのか、Awake、Start、Updateなどの主要なイベント関数の役割と違いを初心者向けに徹底解説します。

概要

Unityでゲーム開発を行う上で、スクリプト(C#コード)がどのタイミングで、どのような順序で実行されるのかを理解することは非常に重要です。この一連の流れを「ライフサイクル」と呼びます。ライフサイクルを正しく理解することで、意図した通りにオブジェクトの初期化や更新処理を実装でき、バグの少ない効率的な開発が可能になります。

この記事では、Unityのライフサイクルの中でも特に重要なイベント関数であるAwakeStartUpdateFixedUpdateLateUpdateなどを中心に、それぞれの役割と実行順序、そして効果的な使い方について詳しく解説します。

ライフサイクルイベントの全体像

Unityのスクリプトは、特定のイベントが発生したタイミングで自動的に呼び出される「イベント関数」を持っています。これらの関数は、オブジェクトがシーンにロードされてから破棄されるまで、決まった順序で実行されます。主要なイベント関数の実行順序は以下の通りです。

  1. 初期化 (Initialization)

    • Awake(): オブジェクトがロードされた直後に一度だけ呼ばれます。他のどの関数よりも先に実行されます。
    • OnEnable(): オブジェクトがアクティブになった瞬間に呼ばれます。
    • Start(): 最初のフレームのUpdateが呼ばれる直前に一度だけ呼ばれます。
  2. 物理演算 (Physics)

    • FixedUpdate(): 固定された時間間隔で呼ばれます。物理演算の処理に適しています。
  3. ゲームロジック (Game Logic)

    • Update(): 毎フレーム呼ばれます。ゲームの主要なロジックや入力処理を記述します。
    • LateUpdate(): 全てのUpdate関数が呼ばれた後に毎フレーム呼ばれます。カメラの追従処理などに使われます。
  4. レンダリング (Rendering)

    • OnRenderObject() など: オブジェクトの描画に関連する処理です。
  5. 終了 (Teardown)

    • OnDisable(): オブジェクトが非アクティブになった瞬間に呼ばれます。
    • OnDestroy(): オブジェクトが破棄される直前に呼ばれます。

主要なイベント関数の詳細

初期化:Awake() vs Start()

Awake()Start()はどちらも初期化処理に使われますが、実行タイミングに重要な違いがあります。

関数実行タイミング主な用途
Awake()スクリプトインスタンスがロードされた直後。常にStart()より前。自身のコンポーネントの参照取得や、他のオブジェクトの状態に依存しない初期化。
Start()最初のフレームのUpdate()直前。Awake()の後。他のオブジェクトのAwake()が完了していることを前提とした初期化。

重要なのは、全てのオブジェクトのAwake()が完了した後に、各オブジェクトのStart()が呼ばれるという点です。 そのため、スクリプト間で参照を渡し合うような場合は、Awake()で参照を確保し、Start()でその参照を使って処理を行うのが安全です。

using UnityEngine;

public class PlayerController : MonoBehaviour
{
    private Rigidbody rb;
    private GameManager gameManager;

    // 自身のコンポーネント取得はAwakeで行う
    void Awake()
    {
        rb = GetComponent<Rigidbody>();
        Debug.Log("Awake: Rigidbodyを取得しました。");
    }

    // 他のオブジェクトの初期化が完了している前提の処理はStartで行う
    void Start()
    {
        gameManager = FindObjectOfType<GameManager>();
        gameManager.RegisterPlayer(this);
        Debug.Log("Start: GameManagerにプレイヤーを登録しました。");
    }
}

更新処理:Update() vs FixedUpdate() vs LateUpdate()

これらの関数は毎フレーム、またはそれに近い頻度で呼ばれますが、用途が明確に異なります。

関数実行タイミング主な用途
FixedUpdate()固定の時間間隔(デフォルトは0.02秒)。フレームレートに依存しない。Rigidbodyを使った物理演算(力の追加など)。
Update()毎フレーム。フレームレートに依存して実行間隔が変わる。入力処理、時間経過による移動、ゲームロジック全般。
LateUpdate()全てのUpdate()が完了した後。カメラの追従、キャラクターのIK(インバースキネマティクス)など。

FixedUpdate()は物理エンジンの更新タイミングと同期しているため、Rigidbodyに力を加えるなどの物理的な処理は必ずここで行います。一方、Update()はフレームごとに呼ばれるため、入力の取得や見た目の更新など、物理演算と直接関係ない処理に適しています。Time.deltaTimeを乗算することで、フレームレートの変動に影響されない動きを実装できます。

LateUpdate()は、他のオブジェクトのUpdate()での動きが全て完了した後に実行したい処理に使います。例えば、プレイヤーキャラクターがUpdate()で移動した後に、そのプレイヤーをカメラが追いかける、といった処理に最適です。これにより、カメラの動きがカクつくのを防げます。

using UnityEngine;

public class CameraFollow : MonoBehaviour
{
    public Transform target;
    public Vector3 offset;

    // ターゲットの移動が完了した後にカメラ位置を更新する
    void LateUpdate()
    {
        if (target != null)
        {
            transform.position = target.position + offset;
        }
    }
}

パフォーマンスに関する注意点

Update()FixedUpdate()は非常に頻繁に呼び出されるため、これらの関数内に重い処理を記述すると、ゲーム全体のパフォーマンスに深刻な影響を与えます。特に、海外の熟練開発者の間では、以下の点がよく指摘されています。

  • Update()の乱用を避ける: 毎フレーム実行する必要のない処理は、Update()から分離しましょう。例えば、特定の条件が満たされた時だけ実行する処理は、イベントドリブンな設計やコルーチンを検討します。
  • GetComponentのキャッシュ: Update()内でGetComponent<T>()を呼び出すのは非常に非効率です。必要なコンポーネントはAwake()Start()で一度だけ取得し、変数に保持(キャッシュ)しておきましょう。
  • カスタムアップデートマネージャー: 数百、数千といった大量のオブジェクトがUpdate()を持つ場合、UnityのネイティブコードとC#コード間の呼び出しオーバーヘッドが問題になることがあります。このような場合、更新処理を管理するシングルトンクラス(カスタムアップデートマネージャー)を作成し、そこから各オブジェクトの更新メソッドを呼び出すことで、パフォーマンスを改善できる場合があります。

まとめ

Unityのライフサイクルを理解することは、初心者からプロフェッショナルまで、全てのUnity開発者にとって不可欠な知識です。各イベント関数がいつ、なぜ呼ばれるのかを把握することで、より信頼性が高く、パフォーマンスの良いコードを書くことができます。

  • 初期化: Awake()で自身の準備を整え、Start()で他のオブジェクトとの連携を開始する。
  • 更新: 物理演算はFixedUpdate()、入力やロジックはUpdate()、追従処理はLateUpdate()と使い分ける。
  • パフォーマンス: Update()内の重い処理は避け、コンポーネントのキャッシュを徹底する。

これらの基本をしっかりと押さえ、効率的なUnity開発の第一歩を踏み出しましょう。