【Unity】Unityの再利用システム「Prefab」を完全理解する - オブジェクトの複製と管理を効率化!

作成: 2025-12-07

Unity開発の効率を飛躍的に向上させる最重要機能の一つ、Prefab(プレハブ)。Prefabとは何か、その作り方から使い方、そしてネストやバリアントといった応用までを徹底解説します。

概要

Unityでゲームを開発していると、同じ設定のオブジェクトを何度も使いたい場面が必ず出てきます。例えば、敵キャラクター、弾、コイン、木や岩といった背景オブジェクトなどです。これらのオブジェクトを一つ一つ手作業でコピー&ペーストして配置するのは非常に手間がかかりますし、後から「やっぱり敵のHPを少し変えたい」となったときに、シーンに配置した全ての敵オブジェクトを一つずつ修正しなければならず、悪夢のような作業になってしまいます。

この問題をエレガントに解決するのが、Unityの最も強力で重要な機能の一つである**Prefab(プレハブ)**です。Prefabは、ゲームオブジェクトとそのコンポーネント、プロパティ設定をひとまとめにした「設計図」や「テンプレート」のようなものです。この記事では、Prefabの基本的な概念から作り方、そして開発効率をさらに高めるための応用的な使い方までを詳しく解説します。

Prefabとは?

Prefabは、再利用可能なゲームオブジェクトのアセットです。ヒエラルキーウィンドウで作成・設定したゲームオブジェクトを、プロジェクトウィンドウにドラッグ&ドロップするだけで、誰でも簡単にPrefabを作成できます。

一度Prefab化してしまえば、そのPrefabアセットをまるでスタンプのようにシーンに何度でも配置(インスタンス化)できます。そして、Prefabの最も強力な点は、元のPrefabアセット(設計図)を変更すると、そのPrefabから生成されたすべてのインスタンス(シーン上のオブジェクト)に変更が自動的に反映されることです。

Prefabを使うメリット

  • 再利用性: 同じオブジェクトを簡単に、何度でもシーンに配置できます。
  • 一括編集: 元のPrefabを編集するだけで、全てのインスタンスを一度に更新できます。これにより、仕様変更に強く、メンテナンス性の高いプロジェクトを構築できます。
  • 動的生成: Instantiate()メソッドを使って、ゲーム実行中にPrefabからオブジェクトを動的に生成できます。弾の発射や敵の出現などに必須の機能です。

Prefabの作り方と使い方

1. Prefabの作成

  1. オブジェクトの準備: ヒエラルキーウィンドウで、Prefabにしたいゲームオブジェクトを作成し、必要なコンポーネント(スクリプト、Colliderなど)を追加して、Inspectorで値を設定します。
  2. Prefab化: 設定が完了したゲームオブジェクトを、ヒエラルキーウィンドウからプロジェクトウィンドウの任意のフォルダ(Prefabsフォルダを作成するのが一般的)にドラッグ&ドロップします。

これだけで、プロジェクトウィンドウに青い立方体のアイコンを持つPrefabアセットが作成されます。同時に、ヒエラルキー上の元のオブジェクトも青いアイコンに変わり、Prefabインスタンスであることを示すようになります。

2. Prefabのインスタンス化(配置)

  • 手動配置: プロジェクトウィンドウのPrefabアセットを、シーンビューまたはヒエラルキーウィンドウにドラッグ&ドロップします。
  • 動的生成: スクリプトからInstantiate()メソッドを使って生成します。
using UnityEngine;

public class Spawner : MonoBehaviour
{
    // Inspectorで設定するPrefab
    public GameObject enemyPrefab;

    void Start()
    {
        // 3秒ごとに敵を生成するコルーチンを開始
        StartCoroutine(SpawnEnemies());
    }

    IEnumerator SpawnEnemies()
    {
        while (true)
        {
            // Prefabから新しいインスタンスを生成
            Instantiate(enemyPrefab, transform.position, Quaternion.identity);
            yield return new WaitForSeconds(3f);
        }
    }
}

Prefabの編集とオーバーライド

Prefabの編集

Prefabアセットを編集するには、以下の方法があります。

  • Prefabモード: プロジェクトウィンドウのPrefabアセットをダブルクリックするか、ヒエラルキー上のPrefabインスタンスを選択してInspectorの「Open」ボタンを押すと、Prefab編集専用の「Prefabモード」に入ります。ここで加えた変更は、すべてのインスタンスに影響します。

オーバーライド (Override)

シーンに配置した特定のインスタンスだけ、Prefabの設定から一部を変更したい場合もあります。例えば、「この敵だけHPを少し多くしたい」「この木だけ少し大きくしたい」といったケースです。

シーン上のPrefabインスタンスの値をInspectorで変更すると、そのプロパティは太字で表示され、オーバーライドされた(上書きされた)ことを示します。この変更は、そのインスタンスにのみ適用され、元のPrefabや他のインスタンスには影響しません。

オーバーライドした設定を元のPrefabに適用したくなった場合は、Inspectorの上部にあるOverridesドロップダウンからApply Allを選択します。逆に、オーバーライドを破棄してPrefabと同じ設定に戻したい場合はRevert Allを選択します。

応用:Nested Prefabs と Prefab Variants

Unity 2018.3から、Prefabはさらに強力になりました。

  • Nested Prefabs(ネストされたPrefab): Prefabの中に別のPrefabを入れることができます。例えば、「銃」のPrefabを作成し、それを「兵士」のPrefabに組み込む、といったことが可能です。これにより、よりモジュール化されたコンポーネントの組み立てが可能になります。
  • Prefab Variants(Prefabバリアント): あるPrefabを基にして、その差分だけを保存する「亜種」のPrefabを作成できます。例えば、「通常ゴブリン」Prefabを基に、「赤ゴブリン」(マテリアルの色だけが違う)や「ゴブリンアーチャー」(弓を持つという差分がある)といったバリアントを作成できます。元の「通常ゴリン」PrefabのHPを変更すれば、その変更はすべてのバリアントに継承されるため、非常に効率的な管理が可能です。

まとめ

Prefabは、Unityにおけるオブジェクト指向的な考え方を体現した機能であり、効率的でスケーラブルなゲーム開発を行うための根幹をなすシステムです。

  • Prefabは再利用可能なオブジェクトの「設計図」。
  • 元のPrefabを編集すれば、全てのインスタンスが一括で更新される。
  • Instantiate()で、ゲーム実行中にオブジェクトを動的に生成できる。
  • オーバーライドで、特定のインスタンスだけ設定を上書きできる。
  • バリアントを使えば、基本Prefabを継承した差分Prefabを効率的に管理できる。

ゲーム内のあらゆるオブジェクト(プレイヤー、敵、アイテム、UI要素など)をPrefabとして管理する習慣をつけることが、脱初心者への大きな一歩となります。