床も光も整いました。でも入ってみると、やけに静かです。
音を足したいのですが、ここで2種類の音を区別する必要があります。部屋のどこにいても同じ音量で流れるBGM と、その場所に近づくと大きくなる環境音 です。設定を間違えると、部屋の隅にいるのに滝の音が耳元で鳴ったりします。
この記事では、この2種類を置き分けて、会話の邪魔にならない音量に決める ところまでを解説します。
この記事でわかること
- 2Dの音と3Dの音の作り分け
- 距離でどこまで聞こえるかの決め方
- 会話の邪魔にならない音量の目安
- 音源ファイルの取り込み設定
床のあるシーンから始めます。まだなければ 最初のワールド で作れます。
どこでも鳴る音と、その場所の音
音の置き方は2種類です。違いは 距離で変わるかどうか だけです。

- 2Dの音: 部屋のどこにいても同じ音量。BGMや、全体にかける環境の雰囲気に使います
- 3Dの音: 音源に近づくと大きく、離れると小さくなります。噴水、焚き火、機械、スピーカーに使います
Unityでは、AudioSourceの Spatial Blend という設定でこれを切り替えます。0 なら2D、1 なら3Dです。
VRChatでは、これに加えて VRC Spatial Audio Source というコンポーネントを付けます。VRChat側の距離減衰を使うためのもので、これを付けると AudioSource も一緒に追加されます。
もう1つ、先に知っておくと音量が決めやすくなります。プレイヤーの声は、既定で25mまで届きます。 BGMや環境音は、この声の下に置くのが基本です。VRChatは会話が主 役の場所なので、音楽が主張しすぎると居づらくなります。
実践:BGMと噴水の音を置き分ける
同じ音源ファイルを使って、2Dと3Dの違いを聞き比べます。
1. 確認用の音を取り込む
比較用の音を用意しました。確認用WAVをダウンロードする(モノラル・44.1kHz・16bit PCM)
Projectに Assets/Audio フォルダを作り、ダウンロードしたファイルをドラッグします。
自分の音源を使う場合は、権利を確認してください。配布サイトの規約で「ワールドに使ってよいか」が決まっています。市販の楽曲や、他のゲームから抜き出した音は使えません。
2. 2DのBGMを置く
「Create Empty」で WorldBGM を作り、Positionを (0, 1, 0) にします。
「Add Component」で VRC Spatial Audio Source を追加すると、AudioSourceも一緒に付きます。
| 項目 | 設定 |
|---|---|
| AudioClip | 取り込んだ音 |
| Play On Awake | 有効 |
| Loop | 有効 |
| Volume | 0.12 |
| Spatial Blend | 0(完全に2D) |
VRC Spatial Audio Source 側では Use Spatialized Audio を無効 にします。
この2つは両方とも変えてください。 Spatial Blendだけ、あるいは空間化の無効だけを変えて「距離の影響が消えた」と判断すると、あとで食い違います。
Playして、部屋の中央・隅・入口を歩いてみてください。どこにいても音量が変わらなければ成功 です。
確かめたら、WorldBGM のAudioSourceをいったん無効にします。次の音と重ねないためです。
3. 3Dの環境音を置く
「Create Empty」で RoomSpeaker を作り、Positionを (0, 1.2, 1.5) にします。ここに噴水や焚き火があると思ってください。
同じく VRC Spatial Audio Source を追加します。
| 項目 | 設定 |
|---|---|
| AudioClip | 同じ音 |
| Play On Awake | 有効 |
| Loop | 有効 |
| Volume | 0.25 |
| Spatial Blend | 1(完全に3D) |
| Doppler Level | 0(動かない音源なので不要) |
VRC Spatial Audio Source 側は、空間化を有効にして次のようにします。
| 項目 | 設定 | 意味 |
|---|---|---|
| Gain | 0 dB | 追加の増幅はしない |
| Near | 0 m | ここまでは減衰しない距離 |
| Far | 4 m | ここで聞こえなくなる距離 |
| Volumetric Radius | 0 m | 点の音源として扱う |
音源の場所が見えるように、Cubeを SpeakerMarker として (0, 1.2, 1.5)、Scale (0.3, 0.3, 0.3) に置きます。目印なので、音が出るために必要なわけではありません。
4. 距離を確かめる

Playして、音源に近づいたり離れたりしてみてください。
| 動き | 期待する結果 |
|---|---|
| 音源のすぐ横に立つ | はっきり聞こえる |
| 3歩下がる | 小さくなる |
| 部屋の反対の隅へ | ほとんど聞こえない |
| 音源のまわりを回る | 左右の聞こえ方が変わる |
Far の値を 4 から 10 に変えて、もう一度歩いてみてください。部屋の隅まで聞こえるようになります。Farは「ここで聞こえなくなる距離」 です。既定は40mなので、小さな部屋では広すぎます。
Near は「ここまでは減衰しない距離」です。0のままでほとんどの場合は足ります。滝や大きな機械のように、音源自体に広 がりがある場合だけ Volumetric Radius を使います。
音量は「声を張らずに話せるか」で決める
数字より、この基準のほうが確実です。

出発点はこのあたりです。
| 用途 | Volumeの目安 |
|---|---|
| BGM(2D) | 0.08 〜 0.15 |
| 環境音のそば(3D) | 0.2 〜 0.35 |
| Gain | 0 のまま |
Gainは先に上げないでください。 強い増幅なので、10dBでも体感はかなり大きくなります。Volumeを0.5付近まで上げても足りないときだけ検討します。
決め方の手順はこうです。
- Volumeを小さめにしてBuild & Testで入る
- 自分で声を出してみる(友達がいればなお良い)
- 声を張らずに話せるなら合格
判断の目安を言葉にすると、こうなります。
- 大きすぎ: 入った瞬間に曲が主張して、会話が引っかかる
- ちょうどいい: あると気づくが、話し始めると後ろに下がる
- 環境音として良い: 音源のそばで「ここは噴水だ」と分かり、2〜3歩離れると会話の邪魔にならない
もう1つ、音は足し算になります。 焚き火・雨・虫の声・BGMを全部0.3にすると、個別には良くても部屋では大きすぎます。音を増やしたら、全体をもう一段下げてください。
エディタのヘッドホンとVRChatでの聞こえ方は一致しません。最終確認は必ず実際のVRChatで行います。
うまくいかないときは
- 音が出ない → AudioClipが入っているか、Play On Awakeが有効か、Volumeが0でないか、Muteが入っていないか
- 3Dにしたのにどこでも同じ音量 → Spatial Blendが
1か、VRC Spatial Audio Sourceの空間化が有効か。両方を確認します - 遠くでも大きい → Farが大きすぎます。または実は2Dのままです
- そばでも小さい → Volumeを上げます。それでも小さいなら、元のファイル自体が小さい可能性があります
- 音が割れる → Volume 1にGainを足しています。Volumeを下げてください
おまけ:先に知っておくと良いこと
- 3Dの音はモノラルにする: 取り込み設定で Force To Mono を有効にすると、音の方向が安定して、容量も減ります。2DのBGMはステレオのままで構いません
- 長い音はStreamingに: BGMのような長いファイルは、Load Typeを
Streamingにするとメモリを節約できます。短い効果音はDecompress On Loadが向きます - Play On Awakeを切る場面もある: ボタンで鳴らす音は、入った瞬間に鳴ってほしくありません。ボタンで切り替える で扱います
- QuestやスマホではAudioSourceに制限がある: 同時に鳴る数を減らし、常時ループを控えめにします。長い音は圧縮を強めにします
- 音量を訪問者が変えられるようにする: BGMの音量をワールド内のスライダーで調整できると親切です。ワールド内UIを作る で扱います
まとめ
音は、距離で変わるかどうかで2つに分かれます。
- 2Dはどこでも同じ音量、3Dは近づくと大きくなる
- Spatial Blendと、VRC Spatial Audio Sourceの空間化は両方そろえる
- Farは「ここで聞こえなくなる距離」。小さな部屋なら4〜10m
- 音量は数字ではなく「声を張らずに話せるか」で決める
置いたあとの問いかけは、「この音があるまま、普通に会話できるか?」 です。できなければ、どんなに良い曲でも下げます。
音が決まったら、AudioLinkで音に反応する壁を作る で音に合わせて光らせるか、入口から席までの導線 で居場所を整えます。