ゲームにボスが登場する瞬間。扉が重々しく開く演出。タイトルのオープニング。こうした「見せ場」は、プレイヤーの記憶に残る大事な場面です。ところが、カメラを動かしてキャラのアニメと音を合わせる、という演出を、Blueprintのノードだけで作ろうとすると、あっという間にこんがらがります。
こういう時間軸に沿った演出のため の道具が Sequencer です。カメラ・アニメ・音・エフェクトを、1本のタイムライン上に並べて束ねられます。映像編集ソフトのように、トラックを重ねてキーフレームを打っていくだけで、映画のようなカットシーンが作れます。この記事では、Sequencerの基本と、ボス部屋に入るとカメラがボスを映して戻ってくる演出を、最後まで作ります。
この記事でわかること
- Sequencer と Timelineノード の違い(複数Actorを束ねるか、1つのBP内で補間するか)
- Level Sequence のトラック(Transform / Camera Cut / Audio など)
- キーフレームと補間(Auto / Linear / Cubic)
- Blueprintから再生する Play と On Finished
- 演出中に操作を止める Set Cinematic Mode
- 実践: ボス部屋に入るとカメラがボスを映して戻る演出
SequencerとTimelineの違い
UEには、時間に沿って何かを動かす仕組みが2つあります。名前が似ていて混同しやすいので、最初に整理します。
- Timelineノード:1つのBlueprintの中で、値をなめらかに変化させる。ドアの角度を0度から90度へ、色を徐々に変える、といった 単体の小さな補間 向き。
- Sequencer(Level Sequence):複数のActor・カメラ・音を、1本のタイムラインに束ねる。カメラを切り替えて、キャラを動かして、音を鳴らす といった、映画のような演出向き。

判断はシンプルです。動かすものが1つで、値の補間だけ なら Timelineノード。カメラが動く、複数のものが同時に動く ならSequencer。見せ場を作りたいならSequencerです。
Level Sequenceとトラック
Sequencerで作る演出の入れ物が Level Sequence です。 コンテンツブラウザで右クリック → Cinematics > Level Sequence で作り、ダブルクリックで開くと、下に横長のタイムラインが現れます。
ここに トラック を足していきます。トラックは「何を動かすか」の帯です。レベルに置いたActorをSequencerにドラッグすると、そのActorのトラックが追加されます。

よく使うトラックは次の4つです。
- Camera Cut:どのカメラで映すかを指定する。演出中のカメラはこれで切り替える。
- Transform:Actorの位置・回転・スケールを時間で変える。カメラを動かすのもこれ。
- Animation:キャラクターにアニメーション(Animation Sequence)を再生させる。
- Audio:BGMやSEを鳴らす。
カメラを演出用に動かすときは、Cine Camera Actor をレベルに置いてSequencerに追加し、Camera Cutトラックでそのカメラを指定します。Cine Cameraは焦点距離や被写界深度など、映画的な設定を持っています。
キーフレームと補間
トラックの中で「いつ・どうなるか」を決めるのが キーフレーム です。タイムラインの再生ヘッドを目的の時刻に置き、値を決めて◆ボタン(またはEnter)でキーフレームを打ちます。最初のキーを打ってから Auto Key を有効にすると、以降は値を変えるだけで自動でキーが追加されます。
たとえばカメラのTransformトラックで、0秒の位置と3秒の位置にキーフレームを打つと、その間をカメラが自動でなめらかに移動します。間の動きの「なめらかさ」を決めるのが 補間 です。

代表的な補間は3つです。
- Auto(Cubic Auto):前後のキーから接線を自動計算し、なめらかな曲線を作る。始点・終点で速度がゆるむ動きになりやすい。迷ったらこれ。
- Linear:一定速度の直線的な動き。機械的な動きに向く。
- Cubic(User):カーブを手で調整して、緩急を細かく作る。
カメラワークはAutoにしておくと、自然な「ため」のある動きになります。
Blueprintから再生する
Level Sequenceは、そのままではゲーム中に再生されません。Blueprintから再生の合図 を送ります。
レベルに Level Sequence Actor を置く(Level Sequenceをレベルにドラッグす ると作られます)と、その中に Sequence Player が入っています。ただしBlueprintから直接 Play は呼べません。間に1ノード挟みます。
- Level Sequence Actorへの参照を用意する(レベル上のActorを選んでからレベルBlueprintで右クリック → 参照を作成、またはBlueprint側で変数にする)
- その参照から Get Sequence Player を引き出す
- 戻ってきたSequence Playerに対して Play を呼ぶ
この「Actorそのものではなく、中のPlayerを取り出してから再生する」という一段が、最初につまずくところです。Play が見つからないときは、たいていActorのピンから直接探しています。

再生が終わったことは、同じSequence Playerの On Finished イベントで受け取れます。「演出が終わったら操作を戻す」という後始末は、必ずここに書きます。ここを忘れると、演出後にプレイヤーが動かせないまま固まります。
バインドは Play より先に。
On Finishedへ処理をつなぐ前にPlayを呼ぶと、極端に短い演出では終了に間に合わないことがあります。バインド → Play の順を習慣にしてください。
実践:ボス登場のカメラ演出
具体的な演出を1つ、最後まで作ります。
ARPGのボス登場、ホラーの初遭遇、パズルの仕掛け作動。プレイヤーがある場所に入ると、操作が一瞬奪われ、カメラが何かを映して、また戻ってくる。ジャンルを問わず使う「見せ場」の型です。
作るのは、ボス部屋の入口に入ると、3秒間カメラがボスを映し、その間プレイヤーは動けず、終わると元の操作に戻る 演出です。
動かすとこうなります。プレイヤーがトリガーに触れた瞬間、操作が効かなくなり、カメラがボスへ切り替わって寄っていく。3秒後にカメラが三人称に戻り、操作が復活する。

Sequencerを組む
まず演出そのものを作ります。
- Cine Camera Actor をレベルに置き、ボスを見下ろす位置に構える。
- コンテンツブラウザで Level Sequence を作り(例:
SEQ_BossIntro)、開く。 - Cine CameraをSequencerに追加し、Camera Cut トラックでそのカメラを指定する。
- カメラのTransformトラックで、0秒(引き)と3秒(寄り)にキーフレームを打つ。補間はAuto。
- ボスのAnimationトラックに、登場アニメ(吠える等)を置く。Audioトラックに効果音を置く。アニメはボスのSkeletonと互換のある Animation Sequence を使う。
- 再生範囲(Playback Range)の終端を3秒 に合わせ、Camera Cutセクションを先頭から終端まで敷く。キーを3秒に打つだけでは、シーケンス全体が3秒で終わるとは限りません。
これで、3秒のカメラワーク+ボスのアニメ+音が1本に束ねられました。SEQ_BossIntro をレベルにドラッグして、Level Sequence Actor を作り、詳細パネルで Auto Play=オフ、Loop=Don't Loop、Pause at End=オフ に設定しておきます。
Blueprintで再生と入力制御をつなぐ
入口に Trigger(Box Collision) を置き、そのBlueprintでグラフを組みます。

つなぎ方は次の流れです。
- On Actor Begin Overlap で、相手がプレイヤーかを Cast(Cast to 自作キャラクター)で確かめ、DoOnce を通して一度だけ走るようにする
- Get Player Controller を置き、その戻り値を Set Cinematic Mode の Target につなぐ。
In Cinematic Mode = true、Affects HUD