レベルにライトを1つ置いて、明るさを10倍にしてみる。ところが画面はほとんど変わりません。逆に消してみても、真っ暗にはならず薄暗いままです。
UE5のライティングは、 光源・Mobility・Lumen・露出 の4つが噛み合って絵になります。どれか1つだけを触っても結果が動かないため、最初は手応えがつかめません。この記事では、4種類のライトの使い分けから、Mobilityが実際に決めて いること、既定で動いているLumen、そして「暗い」「明るすぎる」の犯人になりやすい自動露出の止め方までを解説します。
この記事でわかること
- 4つのライト( Directional / Point / Spot / Rect )の使い分け
- Mobility が決めているのは「焼くか、その場で計算するか」
- UE5で既定で動いている Lumen が何をしているか
- 「暗い」の犯人はライトではなく 自動露出 であることが多い
- 実践: 真っ暗な洞窟を3灯で見せる
4つのライトの使い分け
Place Actorsパネルの「Lights」には5種類が並びますが、そのうち 直接光を出す主要な4つ から押さえます(残る1つのSky Lightは後半で扱います)。4つは 光の出かた が違うので、現実の何にあたるかで覚えると迷いません。
| ライト | 光の出かた | 現実でいうと | 主な用途 |
|---|---|---|---|
| Directional Light | 平行光線。位置は無関係で 向きだけ が効く | 太陽 | 屋外の主光源。1レベルに1つが基本 |
| Point Light | 1点から全方向へ | 裸電球、たき火 | 屋内の照明、松明、光る小物 |
| Spot Light | 円錐状に一方向へ | 懐中電灯、ステージ照明 | 誘導、演出、車のヘッドライト |
| Rect Light | 四角い面から | 窓、蛍光灯パネル、モニター | 窓明かり、柔らかい室内光 |

Directional Lightだけは位置を動かし ても何も変わりません 。太陽と同じで、無限に遠くから平行に届く扱いだからです。明るさと向き、そして色だけが効きます。回転させると、そのまま時刻の変化になります。
Point LightとSpot Lightで最初に触るのは Attenuation Radius (減衰半径)です。これは明るさではなく 光の影響を打ち切る上限の範囲 で、この球の外へは一切届きません。「ライトを置いたのに床が照らされない」ときは、たいていこの半径が足りていません。
新規に配置したPoint Lightの既定値は Intensity 8.0 cd 、Attenuation Radius 1000 です。
Mobilityが決めていること
どのライトにも、詳細パネルの一番上に Mobility の3択があります。ここが初心者にとって分かりにくいのですが、決めているのは 「光の計算をいつやるか」 です。
| Mobility | 計算のタイミング | できること | できないこと |
|---|---|---|---|
| Static | ビルド時に焼き付ける | 最も軽い | 実行中に一切変えられない |
| Stationary | 一部を焼き、一部をその場で | 色・強さを実行中に変えられる | 移動はできない。重 なりに上限がある |
| Movable | 毎フレームその場で計算 | 移動・点滅・すべて自由 | 最も重い |

ここで、UE5では重要な前提があります。 Lumenを有効にしていると、Staticライトを焼いた結果はGIとして使われません。 LumenとベイクしたライトマップのGIは併用できず、Lumen側が優先されるためです。
つまり、次の二択になります。
| 方針 | ライトのMobility | Build Lighting |
|---|---|---|
| Lumenを使う(UE5の既定) | Movable または Stationary | 不要 |
| ベイクに戻す | Static 中心 | 必要(先にLumenを無効化する) |
個人開発では、 まずMovableで作る のが現実的です。UE5のLumenは動的な光を前提にしているため、Movableのままでも十分に見える絵になります。
「Staticにしたら真っ暗になった」という現象は、 ベイク方式を選んだのにBuild Lightingを実行していない ときに起きます。Lumenのまま試している場合は、そもそもStaticにする意味がありません。
補足: Mobilityは、ライトだ けでなくStatic Mesh Actorにもあります。 動かすメッシュをStaticのままにすると、影の位置がずれたまま固まります 。動かす物はメッシュ側もMovableにしてください。
Lumen:置いていない光が回り込む
UE5の標準テンプレートでは Lumen が既定で有効です。これは 動的なグローバルイルミネーション(GI) の仕組みで、ひとことで言えば 光の跳ね返りを自動で計算するもの です。

赤い壁に白い光を当てると、その手前の床がうっすら赤みを帯びます。窓から差した光が、直接当たっていない天井まで明るくします。こうした 置いていない光 を、Lumenがリアルタイムで作っています。
Lumenが担当しているのは2つです。
| 機能 | Project Settingsの項目 | 効果 |
|---|---|---|
| Dynamic Global Illumination | Dynamic Global Illumination Method | 光の跳ね返り 。影の中が真っ黒にならない |
| Reflections | Reflection Method | 映り込み。床や水面に周囲が映る |
どちらも Lumen になっていれば有効です。 Edit > Project Settings > Engine > Rendering で確認できます。
Lumenがあるおかげで、ライトを大量に置かなくても空間が成立します。1つ置けば、その光が壁や床を伝って周囲へ回るためです。
なお「ライトを強くしても変化が薄い」と感じる主な原因は、Lumenではありません。次の節で扱う 自動露出 です。
「暗い」の犯人は露出かもしれない
もう1つ、そしてより多い原因が 自動露出(Auto Exposure / Eye Adaptation) です。
UEの既定では、カメラが人間の目のように 明るさへ順応 します。暗い場所へ行けば徐々に見えるようになり、明るい場所ではまぶしさが落ち着きます。この機能が働いているため、 ライトを強くしても、カメラ側が絞って元の明るさに戻してしまう のです。

ライティングを調整するときは、まずこれを止めます。
- Place Actorsから Post Process Volume をレベルに配置する
- 詳細パネルで
Infinite Extent (Unbound)にチェック を 入れる(レベル全体に効かせるため) - Lens > Exposure を開く
Min EV100とMax EV100を同じ値にする(たとえば両方1.0)
これで明るさが固定され、ライトを変えた分だけ素直に画面が変わります。 ライティングの調整は、露出を止めてから始めてください。 順番が逆だと、何を変えても効果が打ち消されて見えます。
補足: 完成時に自動露出を戻すかどうかは作品次第です。洞窟から屋外へ出た瞬間のまぶしさは演出になりますが、UIの視認性が変わってしまう問題もあります。露出の細かい調整はPost Process Volumeの記事で扱っています。
実践:真っ暗な洞窟を3灯で見せる
ホラーゲームの洞窟、ダンジョンRPGの通路、脱出ゲームの倉庫。 暗い屋内をどう見せるか は、ジャンルを問わず必ずぶつかります。太陽が使えない空間で、3つのライトだけで 「見える暗さ」 を作ります。
完成形
真っ暗だった空間が、松明のまわりだけ暖かく照らされ、奥の出口が光って見える状態になります。

再現条件
Third Person テンプレート で新規プロジェクトを作り、File > New Level > Basic で新しいレベルを開いて、次の状態にします。
| 手順 | 内容 |
|---|---|
| 1 | Player Start を配置し、World Settingsの GameMode Override を BP_ThirdPersonGameMode にする(これがないと歩けません) |
| 2 | 既定で置かれている Directional Light を削除 する(太陽を消す) |
| 3 | Sky Atmosphere・Volumetric Cloud・Exponential Height Fog も削除 する(屋内なので不要) |
| 4 | Sky Light は残す(Basicレベルには最初から入っています。後で使います) |
| 5 | 既定のFloorを引き伸ばして通路を作り、両側と天井にもCubeで壁を立てる |
| 6 | Post Process Volumeを配置し、Infinite Extent (Unbound) をオン、Min EV100 と Max EV100 を 両方 1.0 に |
この時点でPlayすると、 画面はほぼ真っ黒 です。ここから3灯を整えていきます。
1灯目:Sky Lightで底上げする
新しく追加せず、レベルにある Sky Light を選択 して設定を変えます(追加すると2個になり、意図しない明るさになります)。
| 項目 | 値 |
|---|---|
| Mobility | Movable |
| Source Type | SLS Specified Cubemap |
| Cubemap | 適当な明るめのHDRIキューブマップ(未設定なら Real Time Capture をオフにして Intensity Scale で調整) |
| Intensity Scale | 0.1 |
注意: Sky Atmosphereを消したあと、Source Typeが
SLS Captured Sceneのままだと、 真っ黒になった空をキャプチャして光をほとんど出しません 。「Sky Lightを置いたのに何も変わらない」の原因はここです。Cubemapを指定するか、キャプチャの対象がある状態にしてください。
真っ黒だった影の中が、 輪郭がぎりぎり見える程度 に持ち上がります。ここを0にすると、光の当たらない場所が完全な黒になり、プレイヤーは何も判断できません。 「暗い」と「見えない」は別物 で、その境界を作るのがこの1灯です。
2灯目:松明のPoint Light
通路の途中に Point Light を置きます。
| 項目 | 値 |
|---|---|
| Mobility | Movable |
| Intensity Units | Candelas (cd) |
| Intensity | 50.0 cd |
| Attenuation Radius | 400.0 |
| Light Color | オレンジ寄り(R 1.0 / G 0.6 / B 0.3 程度) |
Attenuation Radiusの球が「影響が届く上限」です。 半径を200まで下げると、光が足元しか届かなくなる のが確認できます。ここを動かして、光の届く距離を体感してみてください。
明るさは距離の2乗で落ちます。50 cdなら1m先で約50 lux、2m先では約12 luxです。「思ったより暗い」ときは、 Intensityを2倍ではなく4倍 にすると距離1段ぶんの感覚に合います。
3灯目:出口へ誘導するSpot Light
通路の奥に Spot Light を、出口の方向から手前へ向けて置きます。
| 項目 | 値 |
|---|---|
| Mobility | Movable |
| Intensity Units | Candelas (cd) |
| Intensity | 500.0 cd |
| Attenuation Radius | 1500.0 |
| Inner Cone Angle | 20.0 |
| Outer Cone Angle | 40.0 |
Inner とOuter の差が ふちのぼけ具合 です。同じ値にすると輪郭がくっきりし、差を広げるほど柔らかくなります(既定は Inner 0 / Outer 44)。
遠くまで届かせるには、Point Lightよりずっと大きな数値が要ります。 10m先を照らすなら数百cdから が出発点です。
確認する
Playして通路を歩いてください。 松明に近づくと壁がオレンジに染まり、離れると青みがかった暗がり に戻り、奥に白い出口の光が見えていれば成功 です。
- まったく変化がない → Post Process Volumeの
Infinite Extent (Unbound)が入っていない - 強くしても明るくならない →
Min EV100とMax EV100が違う値のまま(露出が動いている) - ライトの近くだけ光って床が暗い →
Attenuation Radiusが足りない - 影が真っ黒で何も見えない → Sky Lightの
Source TypeがSLS Captured Sceneのまま。空を消したので、真っ黒をキャプチャしている - そもそも歩けない →
GameMode Overrideが未設定か、Player Startが無い - 全体が妙に明るい → Sky Lightを追加して2個になっている(World Outlinerで確認)
ここで 松明のPoint Lightだけを消して みてください。周囲のオレンジの照り返しも一緒に消えます。壁を赤系の色にしておくと、Lumenによる跳ね返りの違いがはっきり分かります。
ポイントは2つです。
- 暗い場所ほど「底上げの1灯」が要る: 主役のライトより先に、Sky Lightで最低限の明るさを作ります。これが無いと、光の当たらない場所が真っ黒になり、プレイヤーは壁があるのかどうかも判断できません
- 範囲は Attenuation Radius が決める: PointとSpotは、Intensityを上げても半径の外へは一切届きません。「明るくならない」と感じたら、強さより先に半径を疑ってください
光を置いたら、次は色と質感の最終調整です。全体のトーンを整える方法はPost Process Volumeの 記事へ続きます。
Lumenが効いていないときのチェック
「跳ね返りが出ない」「映り込みが真っ黒」というときは、次の順に確認します。
| 確認する場所 | 見るところ |
|---|---|
| Project Settings > Rendering | Dynamic Global Illumination Method が Lumen か |
| 同上 | Reflection Method が Lumen か |
| 同上 | Generate Mesh Distance Fields が オン か(Lumenを Software Ray Tracing で動かす場合に必要) |
| メッシュの大きさ | 極端に小さい物や薄い板は、Lumenの計算に乗りにくい |
| プロジェクトの世代 | UE4から移行したプロジェクトは、既定がLumenではないことがある |
| プロジェクトの想定環境 | Lumenが既定で有効なのは、デスクトップ向け・品質Maximumで新規作成した場合。Mobile / Scalable / VR / Forward Shading では当てはまらない |
Generate Mesh Distance Fields を切り替えた場合は エディタの再起動が必要 です。設定したのに変わらないときは、再起動を挟んでみてください。
なお、対応GPUで Hardware Ray Tracing を有効にしている場合、Lumenはメッシュそのものを直接たどるため、Distance Fieldsへの依存は下がります。ただし非対応環境へのフォールバックを残すなら、オンのままにしておくのが安全です。
ビューポート左上の Lit > Lumen から、Lumenの内部表現を可視化するモードも選べます。「そこに物があると認識されているか」を目で確かめられます。
おまけ:先に知っておくと良いこと
- 屋外はDirectional + Sky Light + Sky Atmosphereの3点セット: この3つが揃って初めて自然な屋外になります。Sky Lightが無いと、日陰が不自然に真っ黒になります
- Intensityの単位は種類ごとに違う: Directional Lightは
lux固定です。Point / Spot / Rect はIntensity Unitsでcd(カンデラ)・lm・Unitlessから選べ、標準設定の既定はcdです。同じ「10」でも意味が変わるので、数字を他のライトから流用しないでください - ライトは重ねるほど重い: 特にMovableで影を落とすライトは負荷が高くなります。演出用の小さな光は、影の投影(
Cast Shadows)を切るだけでかなり軽くなります(→ 計測の記事) - Emissiveマテリアルも光を出す: Lumenが有効なら、自己発光するマテリアルからの間接光が周囲に回ります。ネオンや魔法陣の「にじみ」はこれで作れます。ただし 主照明の代わりにはなりません 。Emissive値を1より十分大きくする必要があり、小さく強い面はちらつきやすく、鋭い影も作れません。確実に照らしたい場所にはライ トを併用してください(→ マテリアルの記事)
- たくさんのライトを置きたいなら、専用の仕組みがあります: 「動くライトを増やすほど重い」という前提そのものを変える MegaLights という機能が用意されています。多数の動的ライトに影を落とさせても破綻しにくい仕組みで、ネオン街・多数のたいまつ・大量の魔法エフェクトのような画づくりが現実的になります。 お使いのバージョンで使えるかは
Project Settings → Renderingで確認 してください(対応環境の条件があります) - 重いと感じたらベイクへ: 実行時の負荷を大きく下げる選択肢です。ただし Lumenを無効にしてから 行います(Project Settingsで
Dynamic Global Illumination MethodをNoneにし、Allow Static Lightingをオンにする)。そのうえで動かさないライトをStaticにしてBuild Lighting Onlyで焼きます。焼き直しに時間がかかるため、レベルの形が固まってからにしてください
まとめ
- 主要な直接光は4種類。 Directionalは向きだけ、Point/Spot/Rectは Attenuation Radius が影響の届く上限を決める
- Mobility は「いつ光を計算するか」 。Lumenを使う間はMovable/Stationaryで、Staticのベイクは併用できない
- UE5は Lumen が既定で有効 。置いていない跳ね返りの光が自動で回り込む
- 「暗い」の犯人は自動露出のことが多い 。調整の前に
Min EV100とMax EV100を揃えて止める - 暗い空間では Sky Lightによ る底上げ が要る。「暗い」と「見えない」は別物
いま作っているレベルで、プレイヤーに最初に見てほしいものはどこにあるでしょうか。そこへ光を1つ置くところから始めてみてください。