ゲームのレベルを作ろうとして、いきなりBlenderで壁や床のモデルを作り始める。でも、いざUEに並べてみると、「通路が狭すぎる」「天井が低くて圧迫感がある」「ジャンプが届かない」と、寸法のやり直しが続きます。見た目を作り込む 前に、まず 広さ・高さ・距離の手触り を確かめたい。
それを、外部ソフトなしでUEの中だけでやるのが グレーボクシング です。UE5の Modeling Mode を使えば、箱や階段をその場で置いて、ゲームの面白さを検証できます。この記事では、Modeling Modeの入り方から、箱を彫って部屋や塔を組むまでを、小さな見張り塔を建てながら解説します。
この記事でわかること
- グレーボクシングとは: 見た目より先に広さ・高さ・距離を確かめる
- Modeling Modeへの入り方(Shift+5)
- Box / Cylinder / Stairs を 数値指定で置く
- PolyEdit と Boolean で部屋を彫る
- プレイヤーカプセルを基準にした 寸法感覚
- 実践: 登れる見張り塔をグレーボックスで建てる
グレーボクシングとは何か
グレーボクシング(greyboxing) とは、テクスチャや装飾を付けない 灰色の箱だけ でレベルの形を組み、 遊びの手触りを先に確かめる 工程です。ブロックアウトとも呼ばれます。

なぜ見た目を後回しにするのか。それは、 面白さは寸法で決まる からです。
- 広さ: この部屋は広すぎて間延びしないか、狭すぎて窮屈でないか
- 高さ: 天井は圧迫感がないか、ジャンプで届く高さか
- 距離: 足場と足場の間隔は、ちょうど良い緊張感か
これらは、綺麗なテクスチャを貼っても解決しません。むしろ、見た目を作り込んだ後に「やっぱり通路が狭い」と気づくと、モデルの作り直しになります。だから 灰色の箱のうちに、寸法だけを何度も調整する 。これがグレーボクシングの狙いです。
Modeling Modeへの入り方
Modeling Modeは、UE5.0以降 エディタに標準搭載 されています。別途インストールは不要です。

入り方は2つあります。
- モード切替から: ビューポート左上の、
Select Modeと書かれたドロップダウンを開き、Modelingを選ぶ - ショートカット:
Shift + 5を押す
Modeling Modeに入ると、左側に道具のパネルが並びます。Create(作る)・PolyEdit(彫る)・Boolean(くり抜く)など、カテゴリごとに道具がまとまっています。まずはCreateから箱を置いてみるのが、いちばん分かりやすい第一歩です。作業が終わったら、Select Mode(または Shift + 1)で通常のモードへ戻ります。
箱・円柱・階段を置く
Modeling ModeのCreate系ツールで、基本の形をその場に置けます。グレーボクシングで最もよく使うのは、この3つです。

- Box(箱): 床・壁・足場の基本。ツールを選び、
Dimensionsの X / Y / Z を数値で指定 してサイズを決められます - Cylinder(円柱): 柱・タンク・丸い足場に
- Stairs(階段): 段数・1段の高さ・幅を指定して、階段を一発で作れます
ポイントは、 サイズを数値で指定できる ことです。目分量で伸ばすのではなく、「幅200cm・高さ300cmの壁」のように数値で置けるので、寸法をきっちり管理できます。グレーボクシングでは、この数値指定が寸法検証の土台になります。
PolyEditとBooleanで彫る
箱を置くだけでなく、 箱を彫って部屋の形にする のがModeling Modeの強みです。ここで使うのが PolyEdit と Boolean です。

- PolyEdit(ポリゴン編集): 箱の面を選んで編集します。Extrude で面を押し出して壁を伸ばし、Inset で面の内側に一回り小さい面を作る、といった操作で、箱から部屋の凹凸を彫れます
- Boolean(ブーリアン): 2つの形の重なりを使って、片方でもう片方を くり抜きます 。壁の箱に、小さな箱を重ねてBooleanすれば、窓や入口の穴が空きます
たとえば「箱を置 く → PolyEditで壁を上へExtrude → 入口用の小さな箱を重ねてBooleanでくり抜く」の流れで、入口のある部屋が組めます。外部のモデリングソフトを立ち上げることなく、UEの中だけで部屋の形が作れる、これがModeling Modeの便利さです。
守ると後で楽になる寸法感覚
グレーボクシングで一番大事なのは、道具の使い方ではなく 寸法感覚 です。そして、寸法を測る基準は プレイヤーのカプセル です。

UEの標準的なキャラクターは、Character Movement のカプセルで大きさが決まっています。この カプセルを物差し にして、寸法を決めます。
- 通路幅: カプセルが余裕を持って通れるか。狭すぎると引っかかる
- 天井高: カプセルの頭上に余裕があるか。ジャンプで頭をぶつけないか
- 段の高さ: 1段の高さが、キャラクターの Step Height を超えていないか。超えると登れず、階段 として機能しません
特に 段の高さと Step Height の関係 は、グレーボクシングでよくつまずくポイントです。見た目には階段でも、1段が高すぎるとキャラが登れません。Modeling ModeのStairsで作るときは、1段の高さをStep Height以下に収めるのが鉄則です。数値で置けるModeling Modeなら、この調整が簡単にできます。
実践:登れる見張り塔を建てる
アクションの攻略ポイント、ステルスの監視塔、アスレチックの中間ゴール。 「登れる塔」 は、多くのゲームで欲しくなる構造物です。ここではその一棟を、Modeling Modeのグレーボックスで、実際に登れるところまで建てます。
作るのは、 Boxで土台を組み、PolyEditで壁を立て、Stairsで階段を回し、Booleanで入口をくり抜いた、屋上まで登れる見張り塔 です。
動かすとこうなります。PIEでキャラクターを操作すると、塔の入口から中へ入れて、階段を登って屋上まで行けます。屋上にはコインを置いてあり、「登ってでも取りに行きたい形か」を、実際に登って確かめられます。

手順
| ステップ | やること |
|---|---|
| 1. 土台 | Box で塔の土台(例:500×500×100cm)を置く |
| 2. 壁 | Box で四方の壁を立てる、または PolyEdit で床から壁を Extrude |
| 3. 階段 | Stairs で階段を作る。1段の高さは Step Height 以下 に |
| 4. 入口 | 小さな Box を壁に重ねて Boolean でくり抜く |
| 5. 検証 | PIEで実際に登る。屋上にコイン(総仕上げ:コイン集めゲーム で作るもの)を置く |
確かめる
PIEでキャラクターを塔へ向かわせてください。うまくいけば、 入口から入って、階段で屋上まで登れます 。屋上のコインまでたどり着ければ成功です。
うまくいかないときの切り分けです。この 寸法の検証こそがグレーボクシングの本番 です。
- 途中の段で登れず止まる → 1段の高さが Step Height を超えています 。StairsのStep Heightを下げて作り直す(Character Movement のStep Heightと見比べる)
- 入口が通れない・引っかかる → 入口の幅がカプセルに対して狭い。Booleanでくり抜く箱を大きくする
- 屋上から落ちる・柵がない → 手すりのBoxを足す。寸法検証の一 部として、落下対策も見る
ポイントは2つです。
- 寸法検証が本番: 綺麗な塔を作ることではなく、「登れるか」「登りたくなるか」を確かめるのがグレーボクシングです。段が登れないなら、それは見た目でなく寸法の問題。ここを何度も調整します
- 数値で置けるから直せる: Modeling Modeは数値でサイズを決められるので、「段を5cm低く」といった微調整がすぐできます。目分量のモデリングより、寸法の作り直しがずっと速いです
おまけ:先に知っておくと良いこと
形が決まったらアセットへ差し替える。 グレーボックスで「面白い形」が確定したら、その灰色の箱を土台に、Fabのアセット や自作モデルで見た目を差し替えます。「まず形、あとで見た目」の順で進めると、寸法の作り直しに巻き込まれずに済みます。グレーボックスは捨てる前提の下書きだと考えてください。
生成メッシュの保存先とコリジョン。 Modeling Modeで作ったメッシュは、Project Settings > Plugins > Modeling Mode の Asset Generation Location で決めた場所(既定はレベルと同階層の _GENERATED フォルダ)に保存されます。また、生成されたメッシュにはSimple Collisionが付くので、壁や床としてすぐ機能します。思ったように当たり判定が効かないときは、生成メッシュのコリジョン設定を確認してください。
屋外はLandscape、人工物はModeling Mode。 地形や山のような自然物は Landscape が向き、部屋・塔・通路のような人工物はModeling Modeが向きます。この分担を覚えておくと、レベル制作でどちらの道具を使うか迷いません。
まとめ
外部ソフトなしのレベル制作は、次の流れで進みます。
| 段階 | やること | 道具 |
|---|---|---|
| 入る | Modeling Modeへ | Shift+5 / モード切替 |
| 置く | 基本の形を数値で | Box / Cylinder / Stairs |
| 彫る | 部屋・入口を作る | PolyEdit(Extrude/Inset)/ Boolean |
| 検証 | 登れるか・遊べるか | PIEで寸法を確かめる |
そして貫く原則が、 見た目より先に寸法 ということです。灰色の箱のうちに広さ・高さ・距離を作り込めば、あとから見た目を差し替えるだけで、遊びの手触りは保たれます。
これで、Blenderなしでもレベルの形が組めるようになりました。あなたの作りたいステージで、プレイヤーが一番わくわくする「登れる場所」はどこでしょうか。まずは灰色の箱を1つ、置いてみてください。
さらに学ぶために
- Landscapeで地形を作る — 屋外はLandscape、人工物はModeling Mode
- エディタUIの基本操作 — エディタ操作の基礎
- Fabでアセットを入れる — グレーボックスからアセットへ差し替える
- Character Movementコンポーネント — 寸法検証の基準(Step Height)